不凍蛋白質特別研究チーム
ミッション

 不凍タンパク質(Antifreeze Protein: AFP、不凍糖蛋白質AFGPを含む)は、凍結時に水の内部に無数に生成する氷の単結晶(=氷核)に対して強く結合する機能(氷結晶結合機能)を有する物質です。さらに、魚類のAFPは、氷のみならず脂質二重膜にも強く結合してその細胞の寿命を延ばす機能(細胞保護機能)を発揮します。1969年に南極魚の血液から発見されて以来、AFPにはさまざまな実用化が期待されてきました。しかし、その極めて高い希少性と高価格のために、これまで実用化には至りませんでした。当研究チームは、私たちの身近にある芝生等に付着する菌類(きのこ類)や、毎日の食卓に並ぶワカサギ、カレイなどの魚類が、AFPを豊富に有するという意外な事実を発見しました(参考:Synthesiology 1 (1), 7-14 (2008))。また、魚体を原材料とするAFPの大量精製技術の開発に成功しました。これにより、従来は困難であったAFPに関する様々な研究が可能になり、医学、食品、工学分野等でのAFP実用化技術の開発が行われるようになりました。現在、私達は分子レベルでのAFPの構造機能解明に取り組む一方で、耐熱性や安全性に優れたAFPを安価に大量生産するための技術開発を行っています。これらの成果を基にして、産業や医学の分野における画期的なAFP活用技術を創成することが当研究チームの目標です。





トピックス

カレイ由来不凍蛋白質の細胞保護機能の解析

 カリフォルニア大学のルビンスキー教授らは、約4℃の非凍結温度域において魚類由来のAFPが細胞保護機能を発揮することを1990年頃に見出しました。 それ以降、魚類AFPを用いて精子、卵子、臓器などを凍結寸前の温度まで冷却して保存する技術(チルド技術)が米国を中心に検討されてきました。しかし、 AFPの量不足の問題等が解決できなかったため、この技術は未完成のまま現在に至っています。私達は、魚類AFPを溶解した約4℃の細胞保存液の中に糖尿病 治療に役立つとされるインスリン生産細胞(膵島細胞)を浸漬し、同細胞の生存率が保存時間と共にどのように変化するかを調べました。その結果、120時 間(5日間)のチルド保存後であっても、約60%の膵島細胞が生きていることが明らかになりました。保存後の膵島細胞はきちんとインスリン生産能力を保 持していました。最も良好な性能を発揮した細胞保存液は、カレイ由来のI型AFP(下図a、予測構造モデル)を含むものでした(参考: PLoS ONE 8 (9), e73643 (2013))。このAFPが膵島細胞の表 面を構成する脂質二重膜に満遍なく吸着する様子が共焦点レーザー顕微鏡を通して観察されたことから(下図b)、AFPの細胞保護機能は脂質二重膜への結 合によってもたらされると推察されました。なお、本研究の詳しい内容は 産総研公式ホームページ「主な研究成果」でも紹介しています。


担子菌類が有する不凍蛋白質の構造機能解析

 私達が食べているシイタケ、エノキ、ブナシメジ、エリンギ、ナメコなどもAFPを生産しています。私達はこれら担子菌類(きのこ類)が生産するAFP の分子構造解析に成功しました(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2012), 109 (24), 9360-9365.)。 研究対象にしたのは北海道の芝生・牧草地帯であれば何処にでも生息している"チフラ・イシカリエンシス"という担子菌で(Tisと略、下写真a,b)、 1930年頃に北海道石狩平野から発見された事がその学名の由来です。私達は この菌がAFPを有することを2003年に報告し、更に約10年の歳月を要して今回の分子構造解明に至りました。下図のcが今回明らかになったTisが生産するAFP(TisAFPと略) の3次元分子構造です。松ぼっくりの一部表面がカットされたような独特の構造をしており、そのカット面が氷結晶に結合する部位です。TisAFPの最大の特徴は、 この面に固く結びついている水分子(結合水)が不規則に配置している点です(下図d)。昆虫AFPの氷結晶結合面の結合水(下図e)に見られるような規則性がありません。 これらの結合水は、AFPが氷と接した瞬間に氷の一部となることにより、AFPと氷を結合させる"錨 (いかり)"の役割を果たすと考えられています。TisAFPの結合水が不規則配置 になってしまう理由はそのペプチド骨格から明らかになりました。昆虫AFPのペプチド骨格とその模式図を下図fに、TisAFPのそれらをgに示します。ご覧のように昆虫AFPの ペプチド骨格はアミド基末端(N末端)から規則的に巻かれる"ベータ(β)らせん構造"によって順序良く構築されています。一方TisAFPでは、らせん中央付近にいきなりN末端側の β1がやって来て、β1から遠く離れた位置からβ2~6が積み上がり、最後にC末端のβ6とβ1が隣接することで全体構造が作られます。この特徴的ならせん構造が結合水の 配置をもたらすと考えられます。このようなβ構造は菌類AFP以外に報告例がありません。私達は、恐らく膨大な種類の菌類AFPが、TisAFPと良く似た構造的特徴(下図g)を有すると考えています (参考:産総研広報ページ)。

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