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エアロゾルデポジション法(AD法)

概要および原理

エアロゾルデポジション(AD)装置の概念図を示します。まず、成膜原料であるセラミックや金属の粒子を粒径が0.08~2 µm程度に整えて、エアロゾル発生器にセットします。次に、ヘリウムやアルゴン、窒素などのキャリアガスを供給すると、エアロゾル化チャンバー内において、原料粒子は攪拌・混合によりエアロゾル化(固相-気相状態)化します。

そして、成膜室チャンバーとエアロゾル発生器との圧力差によってエアロゾル粒子は搬送されてノズルから噴射され、このときのエアロゾル粒子の持つ運動エネルギーが、基板へ衝突の際に成膜エネルギーに変えられて、基板-粒子間、粒子間の結合を実現します。

特徴

膜厚範囲 (数ミクロン~数百ミクロン)
成膜速度 ~数ミクロン/min
成膜可能材料 金属、セラミック(やわらかいプラスチック材は場合により可能)
対象基板材料 各種金属、セラミック、プラスチック (ゴムなどの弾性体は不可)
成膜環境 (真空中)、(ドライ)
成膜温度 (室温)

セラミックスプロセスは一般に1000℃以上の高温での焼成行程をともなうため、金属や半導体、ガラス、ポリマー材料などとの複合・集積化に多くの制限があり、微細なデバイスレベルでは、その機能を充分に引き出せていないのが現状でした。

乾燥した微粉体を原料ソースとし、サンドブラストのように固体状態のまま基材に衝突させ、膜を形成します。 このプロセスの大きなブレークスルーは、基材予熱を行わず熱的アシストの全く無い条件で、常温・固体状態のセラミックス微粒子がポア無く高密度、高強度に基板上に衝突付着する現象、「常温衝突固化現象(Room-Temperature Impact Consolidation:RTIC)」が見出されたことにあります。「セラミックスは原料粒子を高温で焼結して作る」という常識を覆すもので、その応用に期待が集まっています。

AD法は、従来から知られる溶射技術のように、基板に吹き付ける微粒子、超微粒子材料を溶融、あるいは半溶融状態にするのではなく、固体状態のまま常温で基板に衝突させ緻密な膜を形成するところに大きな特徴があり、高温の熱処理を伴わないため、ナノ組織の結晶構造、複合構造をもつセラミックス膜を形成できるなどの利点があります。原理的にも応用面からも従来のコーティング技術とは一線を画し、従来課題を克服する大きな可能性を秘めています。

AD法と大気プラズマ溶射法の比較(レーダーチャート)

適用分野

半導体関連分野
  • 静電ウェハーチャック(絶縁膜、低温成型)「実用化」
  • 耐プラズマ膜(耐プラズマ腐食性、透光性)「実用化」
  • コンデンサ内蔵基板(高誘電率)「試作開発」
ディスプレイ関連分野
  • 圧電スキャナ(厚膜)「一部実用化」
電気素子製品分野
  • 圧電モータ(厚膜)「試作開発」
  • インクジェットヘッド(厚膜)「試作開発」 
磁気応用分野
  • 高周波シールド膜(厚膜、低温化)「試作開発」

AD法の成膜コストを下げ、成膜面積を上げることにより、AD法が適用されるマーケット(市場)が広がるとともに
そこで開発される製品群も性能向上と低コスト化が見込める。

参考文献

  1. 明渡 純 監修:「エアロゾルデポジション法の基礎から応用まで─常温衝撃固化現象による新規セラミックスコーティング技術のすべて─」,シーエムシー出版(2008).
  2. 明渡 純, セラミックス, 46, 529-530 (2011).
  3. 明渡純, M. Lebedev, まてりあ,41(7), (2002) 459-466.
  4. 明渡 純, 金属75, 16 (2005).
  5. J. Akedo and M. Lebedev, Jpn. J. Appl. Phys., 38(9B), 5397-5401(1999) .
  6. J. Akedo, J. Am. Ceram. Soc., 89 1834-1839 (2006).
  7. J. Akedo, J. Therm. Spray Tech., 17(2), 181-198 (2008)
  8. 明渡 純、清原正勝:「研究物語:焼かないでつくるセラミックス膜?!―新しい製膜法を生んだセレンディピティー」, 月刊化学, 11,(2008).
  9. 金村聖志 監修:「全固体リチウムイオン二次電池の開発と製造技術」, サイエンス&テクノロジー, pp169-1183 (2012).
  10. Edt. by M. Singh et al., "CERAMIC INTEGRATION AND JOINING TECHNOLOGIES, Chap.16: Aerosol Deposition (AD) Integration Techniques and Their Application to Microdevices" , WILEY.pp489-520 (2012) .
  11. Edt. by K. Uchino, "Advanced piezoelectric materials -Science and technology-, Chap.14: Aerosol techniques for manufacturing piezolectric materials",Woodhead Publishing Ltd., pp493-538 (2010).

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