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GaNパワーデバイス研究班


ワイドギャップ半導体材料である窒化物半導体は、絶縁破壊電圧が高い、飽和ドリフト速度が大きいなどの特徴があります。またAlGaN/GaNヘテロ接合に形成される二次元電子ガスは、電子密度が高くかつ移動度が高いという特徴があります。そのため、この二次元電子ガスをチャンネルとして用いれば、抵抗が低く、高速動作が可能で、耐圧の高いトランジスタやダイオードなどのパワー電子デバイスを作成することが可能です。
 そのため本チームでは、窒化物半導体の結晶成長装置や、半導体プロセス技術、数値解析(シミュレーション)などを用いて、パワーデバイスの開発を行っています。

1.窒化物半導体材料結晶成長技術
 窒化物半導体素子の開発には、良質な結晶成長技術が不可欠である。本チームでは、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)を主に用いて半導体素子構造の形成を行っている。基板としては、サファイア基板、シリコン基板、SiC基板などをもちいている。サファイア基板は従来からLEDなどに用いられてきた基板であり、結晶成長技術も確立されており、本チームでは、半導体素子のプロセス開発用に主に用いている。SiC基板は格子定数が窒化ガリウムに近いため、良質な結晶性長が可能である。またシリコン基板は、実用化において低価格化に対応するために重要である。また結晶工学としては分子線エピタキシー法も有効な面があり、結晶成長の基礎特性を研究している。図1に有機金属気相成長法により成長した窒化ガリウムの表面写真を示す。原子ステップが観察され、良質な膜であることがわかる。
図1.SiC基板上に成長した窒化GaN膜のAFM像
 (5μm×5μm)
2.GaNパワーデバイスの開発
 2−1.GaN系半導体素子の数値解析

 当チームでは、GaN素子の数値解析(デバイスシミュレーション)の研究を進めている。デバイスシミュレーションを用いれば、実際の素子を作らなくても動作特性の予測が可能であり、実際の素子作成時間が長い場合などに有効である。また、実際の素子の動作特性を向上させる場合に、どのように構造を最適化させたらよいかなどの指針を得ることができる。例えば、シミュレーションにより素子内部の電界・電流・温度分布を解析することで、デバイスの破壊原因を探ることが出来る。今後、GaN素子を実用化していくためには、結晶成長や作製プロセスの研究だけでは不十分であり、デバイスシミュレーション技術を確立していくことが重要である。
 ここでは、デバイスシミュレーションで行った解析例を示す。これまでの研究により、GaN素子の特性には加速された高速な電子(ホットエレクトロン)、および結晶欠陥が大きな影響を与えることが分かってきた。AlGaN/GaNヘテロ接合に形成されるチャンネル中で加速された電子がホットエレクトロンとなり、AlGaNバリア層を通過して、素子表面の欠陥準位にトラップされると、素子抵抗や素子耐圧等を変化させる。図は素子耐圧の実験結果およびシミュレーション結果の比較である。ホットエレクトロンおよび結晶欠陥を考慮に入れることで、実験と良い一致が得られている。
図2-1-1.ゲート・ドレイン長に対する素子耐圧の依存性


2−2.表面保護膜を用いた電流コラプスの低減


 ドレイン電圧が高い場合やゲート電圧が低い場合に、電界強度の高い空乏層がドレイン側のゲート端近辺に形成される。AlGaN/GaNヘテロ界面に形成されたチャンネル内の電子がこの高い電界によって加速され、AlGaNバリアー層を乗り越えてAlGaN層表面の順位にトラップされる。その結果AlGaN層表面はマイナスの電荷を帯びる。このマイナスの電荷は、直下のチャンネル内の電子を遠ざける。その結果チャンネル内の電子密度が低下し、チャンネル抵抗が高くなり、ドレイン電流が低くなる。このAlGaN層表面の順位は深いためトラップされた電子が表面順位から放出されるのには時間がかかり、すぐにドレイン電流量が回復しない。これが電流コラプスといわれる現象である。
 現在までに行われた他の研究グループなどの報告により、SiN(窒化シリコン膜)が電流コラプスを低減させる効果を持つことが知られている。AlGaN層表面に形成されたSiN膜は、AlGaN層表面の準位を減少させるためと考えられている。しかしながら、本チームでは、高耐圧化を目指すためにはSiN膜だけでは不十分であると考えて、High-kとSiN膜を組み合わせた多層絶縁体膜を用いてMISゲート構造を作成することとした。これはゲートリーク電流を低減し、耐圧を向上させ、電流コラプスを低減する効果が期待できる。この多層膜MIS構造を持つ素子を製作した。多層構造としては、AlGaN層側から、SiN/SiO2/High-k、またはSiN/Al2O3/High-kの層構造のものを作成さいた。High-kとしては、ZrO2やHfO2などを用いた。実際に素子を作成し、その特性を調べた結果、1kV以上の高耐圧を示した。またSiN膜を用いているため、High-k材料と組み合わせて多層構造としても、電流コラプスを抑制する効果があった。


図2-2-1.素子構造

2-2-2IdVd特性

図2-2-3.HfO2をHigh-kとして用いた耐圧特性
 

図2-2-4.ZrO2をHigh-kとして用いた耐圧特性

図2-2-5.HfO2 / SiO2 / SiN構造の素子のスイッチング特性

図2-2-6.表面になにもない素子の特性

2−3.AlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタのノーマリオフ化

 当チームでは、窒化物半導体スイッチング素子の開発を目的としている。AlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(AlGaN/GaN HJFET)は通常ノーマリオン動作する。一方で、DCコンバータ等に使用する場合には、ノーマリオフ動作が必要である。そのため本チームでは、1)ゲート部分にp型InGaNキャップ層を用いる方法、2)AlGaN/GaN/AlGaNダブルヘテロ構造を用いる方法、3)リセス構造を用いる方法などの方法を用いてノーマリオフ化の研究を行っている。
 p型InGaNキャップ層を用いる方法では、ゲート部のAlGaNバリアー層上に設けたp型InGaN層のホールの効果により、ゲート部の電子が枯渇されるようにする構造である。またAlGaNバリアー層とInGaN層の界面にはピエゾ効果により負の空間電荷が発生し、これもゲート部のチャンネル内の電子を枯渇させる効果がある。これにより、ノーマリオフ化にすることが可能である。
 また、AlGaN/GaN/AlGaNダブルヘテロ構造を用いた場合には、上下のAlGaNバリアー層のAl組成を制御することにより、チャンネル内の電子密度を制御できる。GaNチャンネルの上部バリアーとの界面は、ピエゾ効果によりプラス電荷にチャージするヘテロ界面であり、下部バリアーとの界面はマイナス電荷にチャージする。Al組成を制御することにより、チャージ量を制御でき、チャンネル内の電子の密度を制御できる。図2-3-1にその素子構造を示す。GaNチャンネル下部のAlGaNバリアー層は、さらにその下にあるGaN層との界面にチャンネルを形成しないようにp型にドーピングするとともに、グレーデッド構造を用いて、上部にいくにしたがって組成がおおきくなるようにしてある。グレーデッドのp−AlGaN層は、組成をゼロから28%に徐々に増やしている。上部のn−AlGaN層の組成は、25%である。これにより、チャンネル内の電子は、ゲートに電圧を加えない限り、常に枯渇している。図2-3-2に直流動作特性を示す。良好にノーマリオフ化してことがわかる。素子構造上ゲート容量が大きい(ドレイン電極やソース電極と、ゲート電極の間に容量がある。)。しかし今後、素子設計の最適化により、高速化が可能であると考えている。

図2-3-1.構造図

図2-3-2.ドレイン電流−電圧特性

3.微細加工技術の導入による素子の高速化と低抵抗化

 図3-1は本研究で製作している横型GaNトランジスタの断面模式図です。一般的に、トランジスタの素子抵抗を下げるには (i) 素子の内部で電流が流れるチャネルの抵抗を下げる、(ii) ソース、ドレインのオーミック電極の接触抵抗を下げる低コンタクト抵抗化、等の方法があります。本研究では、(i) に該当するチャネル長の短縮による低抵抗化、具体的にはゲート電極下のチャネルの長さを短縮する短ゲート長化により、素子抵抗の低減を試みています。短ゲート長化にはさらに長所があり、低抵抗化のみでなく素子の動作速度・利得も向上させることができます。したがって、素子の特性改善には非常に効果的です。
 そこで、当グループでは、電子ビームによるリソグラフィ技術を用いることで微細なパターン形状を形成しています。ゲート長を50 nm程度まで微細化することができます。図3-2は当グループで製作したGaNトランジスタの周波数特性です.トランジスタの高速動作の指標となる電流利得遮断周波数(fT)と最大発振周波数(fmax)は,それぞれfT > 40 GHz,fmax > 110 GHz以上となり,短ゲート長化によって動作速度(動作周波数)の高速化を実現しています.

 


図3-1.素子構造図

図3-2.RF特性