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工藝指導所をめぐる物語

剣持勇とブルーノ・タウト
 剣持けんもち いさむ(1912-1971)の椅子は知らなくても、ヤクルトやジョアの容器をデザインした人といえばピンと
くるのではないでしょうか?もしかしたら見慣れたベンチや食器や灰皿のなかに彼のデザインによるものが あるかも知れません。
 祖国ドイツでは建築家として著名なブルーノ・タウトが来日中の1933(昭和8)年9 月、工藝指導所の研究試作品展覧会がありました。入所2年目、新進気鋭の剣持 勇 とタウトとの出会いでした。そして、工藝指導所 所長の 国井 喜太郎 に請われたタウトは仙台にやってくることになります。家具のデザインを担当していた剣持はタウト付の助手に任命され、3 ヶ月間直接指導を受けました。その経験はその後の彼に多大な影響を与えたといわれています。
 東京で生まれ育ち、東京高等工芸学校を卒業した剣持 勇ですが、ルーツは宮城県にあります。剣持家の祖先は伊達政宗に仕え野蒜に領地を持っていたそうです。
工藝指導所正門前にてタウトを囲む所員たち

 また、勇の弟、 剣持けんもち じんも工藝指導所で家具のデザインを担当し、産業工芸試験所時代まで長く在籍してインテリアの研究を続けました。産総研 東北センターには 剣持 仁 デザインによる家具も保存されています。

玉虫塗と東北工芸
 玉虫塗は輸出品とするために 工藝指導所の 小岩こいわ たかしによって発明され、1933(昭和8)年に特許申請された高級漆器です。この年、工藝指導所と東北帝国大学金属材料研究所は研究成果の商品化と流通のために協力して「東北工芸製作所」の設立を支援しました。以来、つくり続けられ80年となろうとしています。
 東北工芸の元工場長で漆塗りの高度な技術を持ち、仙台の工藝指導所を知る 五十嵐いがらし 邦英くにえいさんによれば、化学塗料が普及する前には漆塗りの需要も職人の数も多く、新しい塗りの技法は工藝指導所から東北各地へ広まっていったのだそうです。漆製品は洗うことで水分が与えられるので、しまいこまずに使うのが一番の手入れになると教えてくださいました。

東北工芸製作所店内

 「指導所の教えは『用の美』、日常使うことで愛着も湧きます」と話してくれたのは 東北工芸製作所 店長の 佐浦さうら みどり さん。伝統を守るだけでなく、宮城県出身のデザイナーとの合作や、産総研 東北センターの粘土膜の技術を取り入れた機能的な玉虫塗の開発を目指すなど新しい商品開発にも熱心に取り組んでいます。
企画展


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