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Healthy Buildings 2006参加報告

リスク管理戦略チーム 篠原 直秀  
 

Healthy Buildings 2006は、ISIAQ(International Society of Indoor Air Quality and Climate)が主催のヒトにとって健康な室内環境を作り出すことを目的とする研究に関する学会であり、2006年 6/4〜6/8にリスボン(ポルトガル)で開催された。トピックとしては、室内空気質と建物に関連する疾患とヒトの応答(IAQ、 SBS、 SARS、疫学的研究、アレルギー、室内曝露、仕事効率、経済評価)、室内気候(温熱環境、騒音、曝露と室内/屋外、生物汚染、PM、 ETS、ラドン、基準値と分析法)、健康建築物の設計と運用(環境(climate)、健康環境のための建築、エネルギーとIAQ、 健康建築と持続性)、健康建築物のための素材、システム、技術(室内汚染物質の発生源、清浄化機器、換気、IAQのコントロール、IAQのモニタリング、モデリングとシミュレーション、エネルギー効率、新しい技術と対策)、健康建築物における、政策とその実施(IAQの基準値と指針値、健康と快適性のための要件、IAQと健康のかかわる政策と法的な問題点、建築デザイン・設計・運用・管理、健康建築を促進させる教育)などであった。

本学会では二件の発表を行った。一件は、VOC類やカルボニル類の年平均値の分布に関するもので、タイトルは「Within-house and Between-house Variability of concentrations of Carbonyl Compounds for Risk Assessment」、もう一件は3部屋間及び外気との換気に関するもので、タイトルは「Infiltration Exfiltration and Inter-room Air Exchange Rates in 26 Houses and their uncertainty」である。

室内濃度分布の研究では、中長期の暴露レベルの分布を適切に評価するためには、評価対象物質の室内濃度、放散量、換気回数といった項目について変動と分布の情報を整理し、既往の短期間の調査結果を長期平均濃度に換算する手法を提案した。 Focus sessionに指定されていたRisk assessmentのセッションで報告したが、強い関心を得ることは出来なかった。セッションも、発表者と司会者以外はリスク評価に関する研究について関心が低く、議論も他のセッションと比較して低調であり、論点のずれた質疑も多々見られた。

換気調査の研究は、他室間の空気交換も含めた換気量を把握することを目的として、@ 簡易で安定したPFC発生源の開発と実測への適用、A 部屋間および外気との換気(空気交換)量の測定、B PFT法により得られる換気量の不確実性の評価を行った。安定したPFC発生源を開発して実測した結果、26軒の平均換気量は夏高く(0.90 /hour)、秋・冬に低かった(0.24, 0.27 /hour)。換気量の変動については、家庭間変動が日間変動や季節間変動よりも大きかった。また、不確実性評価の結果、完全混合の仮定の影響は大きく、実際のある部屋における室内濃度の不均一性がGSDで1.4より大きい場合には、多くの場合結果は信頼できないことが確認された。発表に対しては、測定法についての関心が大きく、多くの質問を得た。写真特に部屋間の空気交換について興味を持つ研究者が多かった。

室内の二次生成やモデル難燃剤等のセッションに主に参加して発表を聞いたが、本学会では光環境や温熱環境の発表も多く、温熱環境と効率にかかわる発表についても複数の発表を聴講した。今回の学会の傾向としては、室内環境と作業効率やコストとの比較、LCAに関する研究が増えていると感じた。また、建築系が主体の学会であるため、IAQよりも温熱環境や光環境、換気システムやそのCFDによる解析などが多かった。また、二次生成や室内のモデルの話は、昨年のIndoor Airから全く進んでおらず、ここ数年停滞している印象を受けた。

 



 

 

 


化学物質リスク管理研究センター

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