IGG The Institute of Geology and Geoinformation, Geological Survey of Japan - AIST
   2011年4月11日福島県浜通りの地震(M7.0)に伴う温泉の変化

 2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震(マグニチュード7.0)の後に,福島県いわき市やその周辺地域の温泉において,湧出量の変化や色の濁りなどの顕著な変化が生じています.いわき市内郷では,アパートの下から約27℃の温泉が新規に湧き出す現象が起きました.また同市泉では,多量の温泉水がかつての炭鉱の通気孔から湧出しています.

 いわき市およびその周辺地域において温泉の変化に関する調査を行った結果,4月11日の地震に伴う温泉の水位変化には,その地域分布に明らかな特徴があることがわかりました.具体的には,地震後に水位の上昇が生じた地域は井戸沢断層や湯ノ岳断層(地表に断層が露出しました)の東側に位置し,一方,水位の低下が生じた地域はこれらの断層の西側や南側に位置しています(図1参照).いわき市内郷における温泉の湧出は,このような広域で見られた温泉変化と同じ原因によって引き起こされたものと考えられます.

 図1には,国土地理院のGPS観測によって明らかになった地殻変動も示しています.これによると,緑の矢印で結んだGPS観測点の距離は,3月11日の東北地方太平洋沖地震の後には10cmほど伸びていますが,4月11日の地震後には縮みに転じ,その縮み量は15cmほどであることがわかります.いわき市における温泉の自噴は,このような地殻変動と深く関係して生じたものと考えられます.

 いわき市内郷のアパート下からの温泉の湧出量は,毎秒2リットルから6リットルの範囲で変動しています.今後も調査を継続し,温泉変化の原因究明を続けていく予定です.

 4月11日の地震から数ヶ月後より,いわき市の山側の地域で深刻な渇水が起きていることが,市の調査によって明らかになっています.上記のような地殻変動の影響も考えられますが,それに加えて地震の強い揺れが地下水の流れに影響を与えた可能性も考えられます。具体的には,地下水が一時的に流れやすくなったために下流側に抜けてしまったという現象です.

(最終更新:2013年5月14日)


図1 2011年4月11日福島県浜通りの地震(M7.0)の伴う温泉変化の分布.GPSおよび地図データは国土地理院HPより引用.(PDF版:2.0MB

図2 地震によっていわき周辺の温泉に水位変化が生じるメカニズムの予想図(PDF版:106KB

1) 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)によって,いわき周辺の地殻全体が東側(海側)に引っ張られるが,海側に近い地域ほどその変動量が大きいため、全体的に地殻は伸びる.そのため,温泉のある割れ目が広がり,全体的に水位が下がる.

2) 2011年4月11日の福島県浜通りの地震(M7.0)によって,井戸沢断層や湯ノ岳断層がずれる.この断層運動によって断層の東側の地殻が縮み,温泉のある割れ目の圧力が上がる.圧力を受けた温泉は出口を探して地表から湧き出る.



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