TN14 含薬用炭マイクロカプセル

問い合わせる ひとつ前に戻る 技術資料集の入り口に戻る

内容の要約

 医薬品、医療分野での利用等に薬用炭のマイクロカプセル化を検討した。薬用炭は、近年では寝たきりの患者の汚物臭除去に活性炭布、活性炭紙、あるいは病院内の処置室の空気清浄化、さらには人工腎臓の補助吸着剤としてヤシ殻活性炭を用いたライフテストや、ヤシ殻活性炭をコロジオン膜で被覆したマイクロカプセルにさらにアルブミンを吸着した例、また石油ピッチ系を原料とした球状活性炭をコロジオン膜で被覆し、ついでアルブミン処理したカプセルが発売されていて、これは多量に体内に入った毒物を血液から吸着除去するといわれている。しかしながら粉末状の活性炭を用いたカプセルの詳細な調製条件と性能を報告した例は少ない。ここでは薬用炭を芯材として、メチレンクロライドにエチルセルロースを溶解させ、ついでゼラチン水溶液中に滴下する水中乾燥法による含薬用炭カプセルの調製条件を明らかにした。また得られたカプセルの内部表面積、メチレンブルー吸着量、細孔分布および膜厚等の測定を行ない知見が得られたので報告する。

 また、薬用炭にアスピリンを吸着させ、エチルセルローズを壁膜としたマイクロカプセルはアスピリンおよびサルチル酸の溶出時間が長く、かつエチルセルローズの濃度によって溶出量を調節できる可能性を見いだした。またアスピリンは服用に際して胃腸障害を起こしやすく、むしろ腸吸収が望ましく、かつ吸収されるときはサリチル酸ソーダと考えられており、本実験はその意味で価値があると見られる。今後、医療分野での厳密な検討を加えることによって徐放、特効性のすぐれたアスピリンを含有するマイクロカプセルが調整されるものと期待する。

詳しい内容

 1. 含薬用炭マイクロカプセル

 (1) 実験方法および装置

 カプセル化の方法は水中乾燥法によったが、芯材に用いた薬用炭は、PAC(松を原料として薬用炭を)−300meshに粉砕した。まず芯材の薬用炭を20g秤量し、あらかじめメチレンクロライド250ml中にエチルセルローズ(100cps)を溶解させる。この溶液のエチルセルローズ濃度は0.2、0,4、0.9、1.2、1.8、3.6%(w/v)とした。次に各濃度のエチルセルローズ溶液にPAC20gを加えてマグネチックスタラー上で20分間激しく攪拌した。PACを懸濁させた各エチルセルローズ溶液を40℃の恒温水槽中に設置した40%ゼラチン水溶液1,000mlに滴下した。攪拌羽根は4枚羽根で翼径60oφ、SUS304を用い500から800rpmの攪拌速度で攪拌しながらメチレンクロライドを徐々に蒸発除去する。24時間後にカプセルを取り出し超音波洗浄器により40℃のイオン交換水でくり返し洗浄した。カプセルは真空乾燥器を用い27℃で20時間乾燥したのち、ガラス容器に密栓し実験に共した。

 (2) カプセルの収率

 エチルセルローズ濃度0.2〜3.6%(w/v)の溶液中にPAC20gを加えた懸濁液を前記の方法でカプセル化した。得られたカプセルの収率を第1図に示した。エチルセルローズ0.9%(w/v)、攪拌速度700rpmで得られたカプセルの走査方電顕によるものである。

 (3) カプセルの性能

 内部表面積およびメチレンブルー吸着量は各エチルセルローズ%(w/v)とも攪拌速度が早くなるにつれて漸増し、最適なカプセルの調製条件は攪拌速度600〜800rpm、エチルセルローズ0・9%(w/v)であることがわかった。カプセルの破損率はきわめて小さく、さなわち、芯材のPACは流出するなど重大な欠点があった。また医療分野ではたとえば人工臓器の補助的吸着剤として使用する場合にもこの欠点を取り除くことが問題であり、カプセル化は有用な手段の一つであると推察された。

 2. アスピリン吸着薬用炭のマイクロカプセル

 (1) アスピリンを吸着した薬用炭の調製

 アスピリンは局方アスピリン粉末を用いた。アスピリン4.0gを精秤し、2,000mlのメスフラスコに入れる。ついて精製水にあらかじめ1.0N塩酸を加え、pHを1.21に調製する。この水溶液をメスフラスコの中のアスピリンに加えて全量を2,000mlとした。20℃の恒温水槽上でマグネチックスタラーを用いてアスピリンを溶解させた。松を原料とする薬用炭を−300meshに粉砕し、その20gを加えて3時間攪拌し、上澄液を分離する。アスピリンを吸着した薬用炭は真空乾燥器で25℃で12時間乾燥し、密栓したガラス容器に入れいて4℃の冷蔵庫の中で保存した。この試料をカプセルの芯物質とした。薬用炭に対するアスピリンの吸着量は薬用炭1g当り200rであった。

 (2) カプセルの調製条件

 マイクロカプセルの調製は前記と略同様の方法によった。

 第1表には各調製条件で得られたカプセルの収率,内部表面積およびかさ密度率の値を示した。

 (3) 抽出試験

 第2図にはpH10.0でのカプセルから溶出するアスピリンの状況を示した。pH10.0ではアスピリンの溶出量は最大値を示したのち減少し、かつエチルセルローズの濃度が低いほど最大値を示す溶出量じかんは短い。これに比較してサリチル酸は直線的に溶出量は上昇したのち一定値を示し、エチルセルローズ濃度の低いほど溶出量が多いことがわかった。

 特長

 医薬品のマイクロカプセル化は、最近非常に進んできている。この研究は、粉状活性炭のマイクロカプセル化技術を開発したもので、その性能は優秀なものである。とくに破損率は市販品と比べて極めて小さい。

 また、一例として、アスピリンについて行ったが、その結果も良好であった。

応用分野

 各種医薬品のマイクロカプセル技術



第1図 攪拌速度とマイクロカプセル収率
TN14F1.gif
エチルセルローズ中のマイクロカプセル濃度(w/v)
○ 0.2%、● 0.4%、△ 0.9%、▲ 1.2%、▽ 1.8%、▼ 3.6%


マイクロカプセルからのアスピリンの溶出(pH10.0、37℃)
TN14F2.gif
エチルセルローズ中のマイクロカプセル濃度(w/v)
X 0.2%、● 0.4%、○ 0.9%、▲ 1.8%、△ 3.6%


マイクロカプセルの電顕写真
TN14F0.jpg

 

第1表 アスピリンを含浸した薬用炭のマイクロカプセル
Etcel%(w/v)ACASP(g)Stirring velocity(rpm)Y(%) S(m2/gρb(g/ml)
0.41740075.647.20.29
0.91740079.531.30.34
1.81760083.117.20.40
3.61760087.915.50.41
Etcel:Ethylcellulose concentrations
ACASP:Aspirin adsorbed on medicinal carbon
Y:Yield of microcapsules
S:Internal surface area
ρb:Bulke density