籾殻灰からのSiCl4の製造(第1報)

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奥谷猛/ 中田善徳
1992年7月 北海道工業開発試験所技術資料 14,35-35

 籾殻中の無機成分の87-97wt%は非晶質の水和した形態のシリカ(SiO2)と小量のアルカリなどの元素からなっている。 籾殻中のSiO2水和物として籾殻の表皮細胞とクチクル層の間に蓄積されたものである。 SiO2の形態は籾殻中の有機成分が燃焼により焼失した後も表皮細胞の細胞壁の形態を示している。 このSiO2は微粒子,大細孔容積,易粉砕性,大表面積のため高反応性であると推定されている。 これらの点よりももっとユニークな特色として毎年の稲作により再生産されることをあげることができる。
 もし籾殻中の活性なSiO2を容易に効率よく高純度化できるなら,このSiO2は高純度シリコンを原料とする半導体やファインセラミックスの様な先端産業のシリコン原料として利用することができるであろう。 シリコンの高純方法の一つにSiO2をCの共存下Cl2と反応させ,SiCl4に変換し,このSiCl4の沸点が57.6℃であることを利用し,蒸留によって高純度化する方法がある。
 SiO2 + 2Cl2 +2C → SiCl4 + 2CO
本研究では,籾殻中に含まれる活性なSiO2とセルロースなどの有機質の不活性ガス中の熱分解により生成したCの混合物の塩素化によりSiCl4を容易に且つ効率よく製造する方法について検討した。
 塩素化反応は,Cl2が流せるTG装置を用い,籾殻をAr気流中900℃1時間処理して得た籾殻くん炭(SiO2:45.3wt%,C:53.6wt%,SiO2は非晶質),籾殻を空気気流中900℃1時間燃焼させ得た籾殻灰(SiO2 95.2wt%)と活性炭の混合物(SiO2/C = 0.85wt/wt),市販SiO2(純度99.999wt%,非晶質)と活性炭及びグラファイトの混合物,α-SiCの塩素化挙動を調べた。
 TGの結果から,籾殻くん炭の塩素化反応性が最も高いことがわかった。 また,粗殻くん炭,α-SiC,市販SiO2-活性炭混合物の等温塩素化実験結果を見ると,籾殻くん炭の塩素化反応速度が高いことが明らかである。 等温塩素化反応過程の炭素の挙動を追跡した結果から,Cが塩素と反応し,塩化炭素を生成し,これがSiO2と反応するものと推定できた。 また,籾殻くん炭の塩素化反応性が高いのは,SiO2とCが同じ籾殻から調製され,その結果SiO2とCの分散性が良いためと推定された。