ポリエチレンの熱分解蒸留

問合わせ ひとつ戻る DB入口へ トップページへ PDF(イメージ)を見る

森田幹雄/ 広沢邦男/ 西崎寛樹/ 三井茂夫
1992年7月 北海道工業開発試験所技術資料 14,33-33

 ポリエチレン廃棄物処理法の基礎研究の一つとして熱分解蒸留法について検討した。
 500℃以下でのポリエチレンの熱分解反応では,分子内ラジカル移動と水素移動反応によって説明される炭素・炭素結合のランダム切断が進行するためその分解生成物は炭素数分布の大きいn-パラフィンを主成分とする飽和炭化水素類とn,1-オレフィンを主成分とする不飽和炭化水素から成る混合物として得られる。
 このために,ポリエチレンを特定成分にまで選択的に熱分解させることは極めて困難であり,分解生成物の回収と再利用を意図した場合にはさらに分離精製や二次的な処理が必要になると考えられる。
 本研究では,熱的な作用のみによってポリエチレンを特定な範囲の成分留分にまで熱分解させるための試みの一つとして,熱分解によって留出してくる重質油成分を再度反応釜にもどして定量的に軽質油分まで分解させることを単蒸留的な熱分解法で検討し,また,広範囲の沸点留分として蒸気状態で留出する熱分解生成物を直接多段充填塔に導き,順次分縮させて比較的整った留分として分別する熱分解蒸留法を検討した。 さらに,分解条件の相違による分解生成物の性状の相違についても比較検討した。
 熱的作用のみによって,ポリエチレンを低分子量の化合物にまで分解でき,かつ熱分解して留出する多成分の分解生成物を順次分縮させることによって,熱分解と同時に比較的整った沸点留分として分離できることが明らかになった。 また,ポリエチレンの熱分解生成物は,直鎖状のパラフィンと1-オレフィンが主成分であることを確認した。 これらの直鎖状化合物は工業原料としても利用価値が高い。