新しい原料による薬用炭

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,26-27

(1)南洋材を原料とする薬用炭
 薬用炭は古くから胃、腸疾患、コレラ、腸チフスなどの治療用、および毒物の解毒剤として救急処置など医療分野に用いられてきた。 そのほか、薬品製造分野では脱色、精製などにも利用されている。 また、最近では人工腎臓用の補助吸着剤、代謝系人工臓器などのライフサイエンス分野で多く使われるようになった。 薬用炭は第10改正日本薬局方に示すように強熱残渣分、重金属類、吸着性能などの規定が非常に厳密であるため、出発原料に制約が生じる。 そのため強熱残渣分の少ない木材などが原料として望ましいと考えられる。 しかしながら、活性炭製造用の木質原料は現在木材輸出国の原木輸出規制などが原因となり極度に品薄となっている。
 本報ではフィリピン産未利用木材2種および国内産松材を原料として流動賦活法と酸洗浄法の組み合わせによる薬用炭の製法について基礎的検討を行い、日本薬局方10(以下日局10と略記)薬用炭の基準を満足する結果を得たので報告する。
(2)ポリアクリルニトリルを原料とした薬用炭
 薬用炭の原料は従来、強熱残渣分の少ない木質系が用いられていると考えられているが、本報では強熱残渣分の非常に少ない合成樹脂を原料とした薬用炭の製法を検討した。 供試原料はポリアクリルニトリル共重合体の繊維屑を用いた。 賦活温度850℃で得られた各賦活物について日局10による薬用炭試験を行った結果を示した。 各試験項目とも薬用炭基準を上まわる良好な値を示すことがわかった。 このことはポリアクリルニトリルを原料とした活性炭は前報とは異なり酸洗浄を必要とせずに薬用炭を調製できるものと思われる