簡単な用語解説
Ca2+(カルシウムイオン)
@起源
カルシウムイオンを支配する最大の因子は地質であり、一般に浅い地下水に最も多く含まれます。例えば火成岩地域の地下水よりも、鍾乳洞などのある石灰岩地域からの地下水は多くのカルシウムイオンを含みます。
その他の起源としては、海水、工場排水、下水などの混入、水道などにおいては施設のコンクリートからの溶出、水の石灰処理などが挙げられます。

A水質基準値
硬度参照。 

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Cl-(塩化物イオン)

@起源
塩化物イオンは、塩素イオン、塩素、クロールなどとも呼ばれますが、塩素という表し方は消毒用の塩素と紛らわしく、注意が必要です。地下水や河川水は、常に多少の塩化物イオンを含んでいます。特に海岸地方の地下水には、しばしば塩水の侵入、風送塩の影響が表れます。加えて、温泉(火山性・化石海水)や火山ガスなども塩化物イオンを含むため、温泉地域や火山地域の地下水では、塩化物イオン濃度が高くなることがあります。
その一方で、下水、家庭排水、工場廃水および糞尿等、ならびにこれらが処理された水の混入など、人間活動に由来するものも少なくありません。このような意味から、塩化物イオンは人為汚染の指標になります。この場合、塩化物イオン濃度の多少よりも、むしろ相対的変動、例えば濃度が突如増加するといった現象が現れたときに汚染を示す可能性が高いと言えます。
 
A水質基準値
水質基準値は200mg/Lですが、これは味の変化を判断基準にしています。アルカリ度の小さい水の場合、塩化物イオンが多いと鉄管などの腐食を促進させる傾向があります。また、塩化物イオンは消毒副生成物との関連も指摘されています。

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d値(ディー値)
@d値とは?
地下水を含む天然水の酸素・水素安定同位体比を解析する際に用いられる指標で、Dansgaard(1964)により提唱されました。非平衡蒸発過程を示しているといわれ、
d=δD-8δ18O
によって定義されています。

A利用方法
降水や地下水の酸素・水素安定同位体比は、(一次近似として)δD=8δ18O+10の関係があることが分かっています(天水線参照)。この式を変形すると、
10=δD-8δ18O
になります。つまり、天然水のδD値からδ18O値の8倍を減じると、大体10程度になる、というわけです。しかし、湖沼水などある一定期間地表に停滞した水は、蒸発を受けるために、この値(d値)は著しく小さくなります。そのため、採取した水が蒸発作用を受けているかどうかを判断することができます。
また、化石水などのd値は著しく小さいことが知られています。そのため、化石水の混入が疑われる深層地下水については、酸素・水素安定同位体比を測定して、その影響を確認することがしばしば行われます。
 

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K+(カリウムイオン)
@起源
カリウムイオンは天然水の主要成分の一つとして数えられていますが、ナトリウムイオンやカルシウムイオンと比較すると、一般に地下水にはわずかしか含まれていません。また、その詳細な行動も十分に解明されているとは言えません。カリウムイオンの主な起源は岩石土壌にあると考えられていますが、カリウムを含む肥料や工場排水に由来するものもあります。

A水質基準値
 特になし

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Mg2+(マグネシウムイオン)
@起源
マグネシウムイオンは天然水中の主成分の一つで、カルシウムイオンとともに硬度の主体を成しています。天然水中のマグネシウムイオンの起源は主に地質ですが、鉱山排水、工場排水(合金、電池など)、下水、温泉などの混入によっても付加されます。また、海水中に多量に含まれるため、海塩の影響の大きいところでは地下水中のマグネシウムイオン濃度は高くなります。

A水質基準値
硬度参照。

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Na+(ナトリウムイオン)
@起源
ナトリウムイオンは天然水中の主成分の一つで、その起源は次のように分類されます。
(a)風送塩、雨水
風送塩は雨水に溶けるため、雨水にもナトリウムイオンが数mg/Lのオーダーで含まれています。この影響は、特に海岸地域で大きく現れます。雨水は地下水の主な涵養源であることから、海岸地域の地下水は、しばしば高いナトリウムイオン濃度を示します。
(b)人間による汚染
人の使用するナトリウム化合物としては、主に食塩(NaCl)があります。また、水道水では、急速ろ過方式の浄水場で使用される凝集剤の影響で、低下したpHを調整するために用いる水酸化ナトリウムや、消毒用の次亜塩素酸ナトリウム由来のものが加わります。このほか、ナトリウムを含む工場排水に由来するものもあります。
(c)岩石、土壌からの溶出
岩石やその風化生成物の土壌はナトリウムを含むため、それが溶出して、地下水に加わります。ナトリウムイオンは土壌コロイドへの吸着力が弱く、地下水と土壌とのイオン交換によって放出されやすいため、地下水では流動するに従って、ナトリウムイオン濃度が増加する傾向が見られます。
(d)海水、温泉水の混入
海水や温泉水の混じるものにはナトリウムイオンが多量に検出されます。

このようにナトリウムイオンの起源となる対象は数多く、ナトリウムイオンの測定値だけでは、その起源を明らかにすることは困難です。しかし、他のイオン濃度との関係を調べることによって、起源を明らかにできる可能性があります。例えば塩化物イオン濃度との比を調べることによって、塩水浸入の影響、人為的汚染の影響などを判断する手がかりが得られます。

A水質基準値
水質基準値は200mg/Lです。これ以上の濃度になると、味覚上の問題が生じます。なお、ナトリウム含有量の多い食物の摂取は、遺伝的な感受性の高い人では高血圧症を進行させます。中程度の濃度(100mg/L前後)でナトリウムイオンを含む飲料水の摂取は、子供の血圧を上げますが、これが若年性高血圧症の進行に大きく寄与するという証拠は得られていません。

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pH(ピーエイチ
@pHとは?
水中の水素イオン濃度の指標であり、ペーハーとも呼ばれます。水素イオンはその他のイオンとは異なり、mg/Lと言った単位ではなく、濃度の対数によってその値が表されます。すなわち、pHの定義は
pH=-log〔H+〕
です。左辺小文字のpはマイナスの常用対数を意味しており、〔H+〕は水素イオンの濃度〔mol/L〕です。25℃の水では、pH=7が中性となり、pH>7がアルカリ性、pH<7が酸性となります。地下水のpHを支配する要因は、地質、火山・温泉、微生物、人間活動など、様々なものがあります。一般に地下水のpHは安定していますが、上記の要因によって水のpH値は敏感に反応するため、pHの変化から、その水に何らかの異常が起こったことを確認できます。ある意味では人間の体温の測定と似ており、熱があることで体に異常のあることを知るのと同様です。pHは測定が簡単であるため、水質異常の早期発見への手がかりになりますが、異常の特性を明らかにするためには、他のイオンの濃度を調べる必要があります。

A水質基準値
水質基準値は5.8〜8.6です。健康面では低pH、高pHの場合は、飲用により粘膜への影響が表れます。低pHの場合は腐食、高pHの場合は味が変化し、ぬめりがでます。また、地下水を水道水として用いる場合、塩素剤による消毒が行われますが、pHがやや高くなると(pH8.0程度以上)その殺菌力が落ちてしまいます。
 
B様々な品目のpH値
様々な品目のpH値の目安を以下に示します。
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SO42-(硫酸イオン)
@硫酸イオンとは?
硫酸イオンはSO42-であり、それ自体は酸でも塩基でもありません。強酸である硫酸(H2SO4)とは異なるため注意が必要です。『硫酸を含む』という場合は、硫酸イオン(SO42-)と水素イオン(H+)とを同時に多量に含み、強酸性を呈する場合を言います。『硫酸イオン』を含むという場合は、単にSO42-を含む場合を指します。

A起源
(a)風送塩、雨水
海塩には塩化ナトリウム(NaCl)だけでなく硫酸イオンも含まれます。風送塩は雨水に溶けるため、雨水にも硫酸イオンが含まれます。この影響は特に海岸地域で大きく現れます。なお、同様のことが塩化物イオン、ナトリウムイオンについても言えます。
(b)人間による汚染
人為的なものとして、肥料(硫安:(NH4)2SO4)、種々の家庭用雑排水、産業排水などが混入した水からも硫酸イオンが検出されます。近年重要視されているのは酸性雨の発生です。酸性雨には水素イオン(pHの項参照)と共に硫酸イオンが多く含まれるため、硫酸イオンは人為汚染の一指標として用いることができます。
(c)岩石、土壌からの溶出
石膏(CaSO4)の溶解やパイライト(FeS2)の酸化によって地下水中のSO42-濃度が高くなることがあります。
(d)海水、温泉水の混入
温泉や火山ガスは、しばしば硫酸イオンを多く含みます。これらが地下水中に混合もしくは溶解すると、地下水中の硫酸イオン濃度は上昇します。
このように硫酸イオンの起源となる対象は数多く、硫酸イオンの測定値だけではその起源を明らかにすることは困難です。しかし、他のイオン濃度との関係を調べることによって、起源を明らかにできる可能性があります。例えばSO4/Cl比を調べることによって風送塩の影響、酸性雨の原因などを判断する手かがりが得られます。

B水質基準値
水質基準値は設定されていませんが、硫酸イオンが多量に含まれると水の味が悪くなり、また、鉄管などの腐食を促進させる傾向があります。

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アルカリ度
アルカリ度の測定は、水試料に所定のpH(終点)に達するまで酸を滴定し、その量を求めることによって行われます。終点のpHは通常、約4です。終点のpH値を明示するために、pH4.3アルカリ度、pH8.3アルカリ度などと表現されます。

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イオン交換(いおんこうかん)
地下水中の溶存成分比は鉱物のイオン交換によって変化します。鉱物の表面などに、元来結合していた陽イオンまたは陰イオンが、地下水中(水溶液中)に放出され、それと交換に地下水から別種の陽イオンや陰イオンが取り込まれる現象をイオン交換と言います。帯水層を構成する岩石・鉱物の化学成分のうち、相対的に結合力の弱いNa+は、地下水中のCa2+とイオン交換して地下水中に溶出する現象がしばしば認められます。

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シュティフダイアグラム(Stiff diagram)、ヘキサダイヤグラム(Hexa diagram)
@シュティフダイアグラムとは?
シュティフダイアグラムは水質データの特性と当量濃度(meq/L)を視覚的に表現するために用いられます。複数のデータを同時に比較する際に便利です。
シュティフダイアグラムは、上図のように、6つの角を持ちます。それぞれの角に対応するイオンはあらかじめ決まっています。例えば、右上の角には塩化物イオン(Cl-)、左中段の角にはカルシウムイオン(Ca2+)の当量濃度が表されます。上の例では、カルシウム濃度は、6.8(meq/L)、硫酸イオン濃度は2.1(meq/L)、硝酸イオンは4.1(=6.2-2.1)(meq/L)であることが判読されます。

A事例
以下では代表的な二つ水質パターンを紹介するとともにシュティフダイアグラムの見方を説明します。
◎Ca-HCO3型
我が国の地下水では、もっとも一般的なタイプです。(Ca2+濃度とHCO3-濃度が高いため)、左右中段が突出しており、“そろばんの玉”のような形をしています。
   
Ca-HCO3型

◎Na-Cl型
海水に代表されるタイプです。下には海水の水質(半谷・小倉,1985)をシュティフダイヤグラムで表現したものを示しましたが、Na+濃度とCl-濃度が極めて高いため、左右上段が突出しており、“さかずき”のような形をしています。海水の場合、注目すべき点は形状だけでなく、その濃度です。@で挙げたダイヤグラムの軸は左右の最大値が10(meq/L)であったのに対し、下図の場合は最大値が600(meq/L)です。
Na-Cl型

以上のように、卓越する成分を表すために○○型、という表現が用いられます。Na-HCO3型、と書かれていれば、ナトリウムと重炭酸イオンの濃度が相対的に高い水である、と考えてください。
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パイパー図(Piper diagram)、パイパートリリニアダイアグラム(Piper trilinear diagram)
@パイパー図とは?
水質特性を把握するために、水文学にて頻繁に用いられる表現方法です。各イオンの当量濃度比を把握するために使用されます。地下水の主たる成分には、陽イオンのナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、そして陰イオンの塩化物イオン、硫酸イオン、重炭酸イオンがあります。パイパー図の下に位置する2つの三角ダイアグラムでは、陽イオン、陰イオンについて、それぞれの成分比がプロットされます。例えば、ある水の水質が、(左下の)陽イオン三角ダイアグラム内の黒点にプロットされた場合、その水には当量比として、カルシウムイオンが60%、マグネシウムイオンが20%、ナトリウムイオンとカリウムイオンをあわせたものが20%、含まれていることを示しています。菱形ダイアグラム内の座標は、三角ダイアグラム内のそれぞれの座標(白丸)から、三角ダイアグラムの外側の辺に沿って伸ばした交点となります(図参照)。

A利用方法
山本(1983)では、特に菱形ダイアグラム内を図のように
T Ca(HCO3)型:河川水や浅い地下水
U NaHCO3型:淡水性の被圧地下水
V CaSO4,CaCl型:
W Na2SO4, NaCl型:海水、化石海水、温泉、坑内水
などのように分類しており、これは現在、一般的に受け入れられています。注意すべき点は、河川水や浅い地下水は必ずT領域にプロットされる、というわけではなく、あくまで目安である、ということです。水文環境図(筑紫平野)では、菱形ダイアグラム内を下図のようにT〜Wの領域とはせずに、やや細かく領域を区分して解析しています。

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塩水(えんすい)
塩分が海水と同程度(35000mg/L)またはこれを多少上回る濃度を持つ地下水や河川水などを指します。しかし、これより塩分が低い場合でも10000mg/L台であれば塩水として取り扱われることが多いため、海水が地下に浸入した場合も、しばしば塩水と呼ばれます。
なお、ここで言う塩分は全溶存物質を意味しています。 

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化石海水(かせきかいすい),化石水(かせきすい)
地層の堆積時に地層中につつみこまれ、そのまま閉じ込められた水を指します。石油や天然ガスを採取する際に、しばしば化石海水が出ることがあります。海成層は海底で形成されるため、地層中に堆積当時の海水が残留します。
 
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硬度(こうど)
@硬度とは?
硬度は、水に含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンを、それに対応するCaCO3に換算してあらわしたもので、換算式は以下のとおりです
H=(2.97×CCa)+(4.118×CMg)
ここで、Hは硬度(mg/L)、CCaはカルシウムイオン濃度(mg/L)、CMgはマグネシウムイオン濃度(mg/L)です。カルシウムイオンとマグネシウムイオンの水質基準は、この硬度によって設定されています。

A水質基準値
水質基準は硬度300mg/L以下です。硬度(主にマグネシウムイオン濃度)が高過ぎると下痢の原因となり、石けんの洗浄効果が低下します。また、硬度がかなり高い水(300〜500mg/L)を飲用しつづけると尿石症になりやすいという報告があります。工業用水の硬度が高いと、ボイラーにスケールを生じさせることによって熱の伝導が阻害され、爆発などの危険性が高まります。適度な硬度の場合には、配管類の防食に役立ちます。

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酸性雨(さんせいう)
化石燃料の燃焼に伴って大気中に放出された硫黄酸化物・窒素酸化物・塩化物・フッ化物が複雑な化学反応によって、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸に変化し、これらを大気中で取り込んだ酸性度の高い降水(雨水や雪)のことを指します。雪の場合、酸性雪といいます。一般にはpH5.6より低いpHをもつ雨水を酸性雨といいますが、実際には、火山などから天然に供給される酸性物質を考慮して、pH5.0以下の雨水が酸性雨として評価されています。

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酸素・水素安定同位体比(さんそ・すいそあんていどういたいひ)
@酸素・水素安定同位体比とは?
原子番号が等しく、質量数が異なる原子を同位体といいます。同位体は陽子の数は同じですが、中性子の数が異なります。原子番号が等しいので、同じ元素であり、化学的性質もほとんど同じです。
水文環境図で用いられている、酸素安定同位体比は、酸素16と酸素18の比(18O/16O)を意味し、水素安定同位体比は重水素と水素の比(D/H)を意味します。ここで元素記号の左上に書かれている数値は質量数を示しており、水素安定同位体に関しては、特にD(=2H)とH(=1H)が用いられます。したがって、酸素・水素安定同位体比のイメージとしては、『普通の酸素(16O)の中に、重い酸素(18O)がどれくらいの割合で入っているのか、もしくは普通の水素(H=1H)の中に、重い水素(D=2H)がどれくらい入っているのか』と捉えることができます。

A単位
標準試料に対する同位体比の千分率偏差‰(パーミル)を用い、δ値で表されます。定義は、
δ18O(δD)=〔(RA/Rs)−1〕×1000 (‰)
です。ここでRA、Rsはそれぞれ水試料Aと標準試料Sの18O/16OもしくはD/Hです。ここで、標準試料は、IAEA(国際原子力機関)が作成していますが、その値は海水の値とほぼ同じです。
したがって、例えば『A地点の地下水の酸素安定同位体比(δ18O値)は、−6.8‰である』という場合は、『海水と比較して、酸素18(18O)の濃度が0.68%(=6.8‰)少ない』と言い換えることができます。

B高度効果
広域の地下水流動を解析する場合には、しばしば同位体の高度効果が利用されます。高度効果とは、降水中の酸素・水素安定同位体比が高度依存性をもつという現象もしくはその程度をいいます。一般に標高が高い地域にもたらされる降水はδ値が小さく(18O、Dの濃度が低く)、低い地域の降水はδ値が大きくなります(18O、Dの濃度が高い)。
上述したように、同位体は質量数が異なっていても、化学的な性質は極めて近いため、18OやDを含む水も、“普通の水(H216O)”とほとんど同じ挙動を示します。このことを利用して地下水の涵養域を推定する試みが行われています。例えば、ある地域の地下水のδ値が大きければ、その地下水の涵養域は低所であり、δ値が小さければ、高所であるといえます(下図参照)。

高度効果
C温度効果
地下水の源となる降水の酸素・水素安定同位体比は、地域の気温に大きく影響されます。これを温度効果と言います。地球規模で見ると。高緯度ではδ値が小さい降水が、低緯度ではδ値が大きい降水がもたらされます。世界の各地域の年平均気温(Ta)と降水の酸素安定同位体比との関係は、
δ18O=(0.338±0.028)Ta-11.99(‰)
です(Gat and Gonfiantini,1981)。日本国内の降水の温度効果は定かではありませんが、浅層地下水、河川水のδ18O値と気温との関係については既に求められており(町田・近藤,2003)、
δ18O=0.37Ta-13.7(‰)
という関係が得られています。このことは浅層地下水の酸素・水素安定同位体比(水素安定同位体比も同様です→天水線)が、降水の酸素・水素安定同位体比に大きく影響を受けており、かつ、その地域の気温と関係が深いことを示しています。

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HCO3-(重炭酸イオン)・アルカリ度
@重炭酸イオンとは?
水文環境図では、重炭酸イオンと記載していますが、この値はアルカリ度から算出されたものです(下の(注)を参照)。そこで、以下ではアルカリ度について述べます。
アルカリ度は、ある特定のイオンの量を示しているわけではなく、水の酸に対する緩衝能を示しています。例えば、アルカリ度がほぼ0の水に少量の酸を加えた場合、その水のpHは加えられた酸によって大きく低下します。その一方で、通常、地下水に少量の酸を加えてもpHは大きく変化しません。その理由は、地下水中には酸を消費する成分が含まれているためです。酸を消費する成分として、特にOH-、CO32-、HCO3-などの炭酸成分が大きく関わっていますが、アルカリ度はこれらの総量を示す指標と言えます。

A起源
雨水のアルカリ度はほとんど0です。雨水が土に浸透すると、土壌中の生物の呼吸作用やバクテリアによる腐食質の分解作用で発生する二酸化炭素が水に溶け込みます。この二酸化炭素が岩石や鉱物を溶かすことにより、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを溶解させ、アルカリ度を増加させます。つまり、アルカリ度は地下において増加しますので、しばしば地下水の滞留時間(地下水が地下に存在している平均的な時間)を表す指標として用いられます。アルカリ度が大きい地下水は地下に長い間滞留していたものであり、アルカリ度が小さい地下水は、雨水が地面に浸透して、それほど時間が経過していない、という解釈が可能です。ただし、地下水中のアルカリ度の増加速度は、土や岩石の性質や性状によって左右されるため、異なる地質条件を有する地域の地下水のアルカリ度を比較して、滞留時間の長さを判断することは困難です。

B水質基準
特になし。

C水文環境図における値
水文環境図ではpH4.3アルカリ度を用いています。

(注)専門家の方へ
データ表の濃度(mg/L)は、CaCO3換算値ではありません。アルカリ度(meq/L)は、表の重炭酸イオン濃度(mg/L)を61.02で除すことによって得られます。ここで行っている変換は厳密には誤用ですので注意してください。

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消毒副生成物(しょうどくふくせいせいぶつ)
消毒の際の副次反応によって生成される物質を指します。水道水の消毒には塩素が用いられていますが、最近、この塩素と水中の有機物とが反応し、人体に有害なトリハロメタンなどの有機塩素化合物を生成することがわかってきました。このような消毒によって生成される副生成物は、消毒副生成物と呼ばれています。
 
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硝酸イオン(NO3-)
@硝酸イオンとは?
硝酸は、硝酸(HNO3)およびその水溶液を指しますが、硝酸イオンはNO3-のみを指し、窒素化合物の一種です。この窒素化合物の元となっているのは、主に、下水、し尿、工場廃水などに由来するタンパク質や有機窒素化合物などです。したがって、窒素化合物の量は地下水の人為的汚染を示す有力な指標と言えます。窒素化合物には、アンモニウムイオン(NH4+)、亜硝酸イオン(NO2?)などもあり、これらの形態はバクテリアの作用により変化します。
地下水中の窒素化合物は、還元的環境では亜硝酸イオンやアンモニウムイオンに富み、酸化的環境では硝酸イオンに富みます。一般の浅層地下水の場合、地下水は酸化的環境にありますから、アンモニウムイオンや亜硝酸イオンなどは最終的には硝酸イオンの形に変化していきます。そのため、NO3?の大部分は、細菌によって人為的汚染物質が分解された最終分解物と考えることができます。

A水質基準値
NO3-の水質基準値は10mg/L以下です。一般の淡水に硝酸イオンは0.1〜1mg/L以上含まれますが、近年、地下水中の硝酸イオン濃度の増大が報告されています。体内では硝酸イオンは速やかに亜硝酸イオンに変化します。亜硝酸塩は生体内に蓄積することはありませんが、人体内での亜硝酸塩の生成は、メトヘモグロビン血症(特に乳児が敏感に反応する)の誘因とされています。また、亜硝酸塩は人体内で食品などに由来する第2級、第3級アミンと反応して、発ガン性を疑われるニトロソアミンを生成するとされています。

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蒸発残留物(じょうはつざんりゅうぶつ),全溶存物質(ぜんようぞんぶっしつ)
蒸発残留物は、水の中に浮遊もしくは溶解している物質の総量をmg/Lで表したものです。その定量方法は、一定量の試料水を完全に蒸発させた後に残った固体の総量から求めます。これは全溶存物質(TDSとも言われます)と同義ですが、全溶存物質の場合は、水中のイオンの量から計算で求めることがあります。原理的には蒸発残留物は“重炭酸が相当の炭酸塩に変化した後に得られる”全溶存物質となります。しかし、計算によって求められた全溶存物質は、蒸発残留物とは完全に一致しないことがしばしば報告されています。

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水質基準(すいしつきじゅん)
水を利用し、供給し、または排出する際に、標準とすべき基準。個々の目的に応じて基準内容は様々であり、また、基準の形式及び制定主体も色々である。主な法的基準としては、水道法(水道水)、下水道法(公共下水道への排除及び下水道終末処理放流水)、廃棄物処理法(し尿処理放流水)、水質汚濁防止法(特定施設排出水)、環境基本法(水質環境基準)などがある。
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水道法(すいどうほう)
明治23年(1890)年に制定された水道条例に代わる水道法制(昭和32年法律177号)。水道により清浄で豊富、低廉な水の供給を図ることによって、公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的としている。この目的達成のために、水道の布設及び管理を適正かつ合理的にするための諸規定や水道の計画的整備・水道事業の保護育成に関する規定をおいている。水道事業のほか、水道用水供給事業、専用水道、簡易専用水道についても規定している。
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環境基本法(かんきょうきほんほう)
環境保全についての基本的な法律(平成5年法律91号)。国民が健康で文化的な生活を確保するうえにおいて、人類の福祉に貢献することが極めて重要であるし。環境の保全について基本理念を定義するとともに、環境保全についての国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにしている。
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水質環境基準→水質汚濁に係わる環境基準
環境基本法16条による公共用水域の水域汚濁に係わる環境上の条件につき、人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準をいう(昭和46年環境庁告示59号)。この環境基準は、いわゆる『水質環境基準』といわれ、次の2つが定められている。
@全ての公共用水域に一律に適用される人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)
A水域の類型指定により示される生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)
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公共用水域
水質汚濁防止法では、河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他公共の用に供される水域およびこれに接続する公共溝渠、灌漑水路、公共の用に供される水路などをいう。
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天水線(てんすいせん)
@天水線とは?
Craig(1961)が示した天然水中の酸素安定同位体比と水素安定同位体比の関係のことです。Craig(1961)は世界各国の河川水、湖水、雨水、雪の酸素・水素安定同位体比を調べ、2つの同位体比には、
δD=8δ18O+10
の関係があることを見出しました。この直線式を天水線と言います。

A利用方法
 地下水をはじめとする水の起源や蒸発環境などを推定するために用いられます。例えば、地下水の酸素・水素安定同位体比が、天水線に近い関係を示すのであれば、その地下水の源は降水であると考えることができます。また、降水起源の水でも、湖水のように強い蒸発作用を受けている場合、
 δD=5δ18O+α
の関係を示すようになります(αは定数)。また油田塩水や地熱水には明らかに天水線とは異なる同位体組成を示すものがあります。こういった特性を利用することにより、地下水の起源を探ることができます(d値参照)。

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電気伝導度(でんきでんどうど)
@電気伝導度とは?
電気伝導率、導電率、電導度ともいいます。金属導体はオームの法則にしたがって電流を流すことが知られています。オームの法則とは電流をI、電圧差をV、抵抗をRとすると、

となる関係です。地下水、河川水、雨水などの天然水も電流に対して抵抗値(上式のR)を持ちます。逆に言えば、天然水もオームの法則に従って電流を通します。この電流の通しやすさを電気伝導度といいます*1。天然水中で主に電荷を運ぶのは水に溶存しているイオンです。そのため、一般には溶存しているイオンが多ければ多いほど、電流を流し易くなり、電気伝導度が上がります(抵抗値は下がります)。したがって、電気伝導度を測定することにより、大まかに水中の溶存イオンの総量を相互に比較することができます。
*1 より一般的には、比伝導率(Ω-1m-1)。SI単位ではS/m。

A水質基準値
 電気伝導度は水質基準対象項目となってはいません。しかし、電気伝導度は
蒸発残留物と密接な関係にあり、この蒸発残留物が水質基準対象項目となっています。
例として、蒸発残留物をY(mg)、電気伝導度をX(μS/cm)とすると
 
という関係が報告されています(半谷・小倉,1985)。この関係式は厳密なものではありませんが、蒸発残留物を知るための目安として便利です(電気伝導度のほうが、測定が簡単なのです)。蒸発残留物は厚生労働省が定める水質基準にて500mg/L以下であることが示されていますが、上の式を用いた場合、電気伝導度が750μS/cmを超えた場合は要注意ということが分かります。

B水文環境図における値
水文環境図では、電気伝導度の単位としてμS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル)を用いています。μというのは10-6を意味しており、S(ジーメンス)は、電気抵抗Ω(オーム)の逆数です。また、天然水の電気伝導度は、1℃あたり2〜2.5%程度変化し、水温が高くなるほど電気伝導度は高くなります。電気伝導度は、水中の溶存イオン量を比較するために測定されるものですので、全ての水試料の電気伝導度を、ある基準温度での値に補正する必要があります。水文環境図では補正前の値を用いています。

C色々な溶液の電気伝導度 
 表に、様々な天然水、飲料水の電気伝導度を示します。以下は一般的な値であり、例えば地下水や湧水の電気伝導度は地域によって大きく変動します。
(*は日本地下水学会,2000より抜粋.水道水は,産業技術総合研究所(茨城県つくば市)における値,水質基準値は上述Aに示した関係式による結果,その他の値は著者らによる測定結果である)

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風送塩(ふうそうえん)
海水の飛沫が舞い上がった海塩(NaCl)を指します。風送塩のために海岸地域では、しばしば数10mg/L以上のナトリウムイオン濃度、塩化物イオン濃度をもつ雨が降ります。

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