【赤外円二色性(VCD)分光法】 (2008年8月作成) |
光を偏光子に通すと直線偏光を作ることが出来る。一方で、直交する二つの直線偏光を用意し、90度位相を前後にずらすことにより、左回りあるいは右回りでらせん状に電気ベクトルが進行する円偏光を得ることができる(図1)。
この左右円偏光に対する媒質の吸収の差を測定する分光法のことを円二色性(CD)分光法と呼び、紫外・可視光領域の測定装置が一般によく知られている(図2)。
赤外円二色性分光法はフーリエ変換技術の進歩によりその波長領域が赤外光領域まで拡張されたものであり、キラリティーを観測する手段の一つである。指紋領域に代表されるスペクトルバンドの多さが特徴となっており、光学純度も含めた生体分子の同定を簡単に行うことができる。

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VCDスペクトルは赤外(IR)スペクトルと対で解析に使用するが、VCDバンドの方はキラリティーの違いにより、正負全く逆のバンドを与えることで区別することができる(図3)。

図3. 光学活性殺虫剤 cis-ペルメトリンのVCD及びIRスペクトル
さらに、分子内単結合の回転の自由度に起因した莫大な数の立体配座構造の中から液体状態における存在比の大きい立体配座構造を把握し、かつ実測のVCDスペクトル形を一致よく予測から再現することが出来れば、正確にキラル有機分子の絶対配置を決定することが出来る(図4)。

図4 光学活性殺虫剤 (1R,3R)-cis-ペルメトリンのVCDスペクトルと分子モデル
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【語句の説明】
VCD: Vibrational Circular Dichroism。赤外光領域がちょうど振動エネルギー準位間遷移に対応しているため、英語では一般に振動円二色性の用語が用いられている。
キラリティー: サリドマイドの催奇性で社会問題化し認知されるようになった、ある形がその鏡像と重ね合わすことが出来ない、右手左手の関係のような性質。
立体配座: 分子のもつ自由度により、とりうるさまざまな形。
絶対配置: キラリティーに対応する真の分子の立体構造。
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