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セミナー 2011年度 2010年度 2009年度
活断層・地震研究センターセミナーは研究者間の意見交換,議論を目的とした公開のセミナーです.一般の方でも聴講可能ですが,内容は専門家向けです.産総研では立ち入りに手続きが必要ですので,外部の方で聴講を希望される場合,予め問い合わせフォーム(右上のリンク)からご連絡ください(報道,行政機関の方は,所属もお知らせ下さい).折り返し,当日の入館手続きをご連絡させていただきます.

第44回 2010年3月24日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
1946年南海地震前の四国太平洋沿岸の上下変動

講演者: 梅田康弘(地震地下水, 尼崎事業所)

昭和南海地震前後の四国の上下変動は地理調査所(現在の国土地理院)によって求められている.しかし測量は地震前の1939年と地震後の1953年にしか行われておらず,前後それぞれ7年間のデータはない.一方,水路局(現在の海上保安庁海洋情報部)は太平洋沿岸部の地震時の上下変化を,調査または測定によって求めている.これらふたつの機関のデータを組み合わせることによって,四国太平洋沿岸の10地点について従来より詳しい上下変動グラフを描くことができた.今回は横軸が年単位の図であるが,次のステップでは証言などを基に日単位の変動曲線も描く.これらを出発資料として次の南海地震の予測曲線を描くことを最終目的とする.


第43回 2010年3月17日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
活断層の地形学的検知限界の差異を利用した確実度ランクの細分化

講演者: 主幹研究員 粟田泰夫

日本では,過去30年以上にわたって活断層分布に関する組織的な認定作業が繰り返し行われ,認定者の能力向上と詳細データの使用に伴って活断層の地形学的検知限界は大きく変化してきた.そこで,地震断層の変位量分布から推定した平均変位速度と,認定者毎に異なる活断層の確実度を比較した結果,確実度や検知限界は変位速度を強く反映していることが明らかになった.本講演では,活断層の検知限界の差異を積極的に利用して確実度ランクを細分化し,変位速度の相対的な分布を表示する手法を提案する.この手法を用いることによって,活断層の認定をより客観化できるほか,発生する地震の規模評価における新たな問題点が見えてくる.


第42回 2010年3月10日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
加速度計及びAEセンサーを用いた高速剪断摩擦時に発生する地震波動測定

講演者: 溝口一生(防災科学技術研究所 地震研究部)

我々は,地震すべりの際に断層面において生成される地震波動を,実験室環境において測定し,高周波波動生成と断層運動との関係を実験的アプローチにより明らかにすることを目指している.今回の講演では,ガウジ形成を伴う脆性摩擦すべりから,摩擦熔融による粘性剪断へと断層内変形メカニズムが変化する高速摩擦実験を行ない,すべりと伴に断層面から発生する振動(地震波)を,加速度計及びAEセンサーにより測定した研究成果を報告する.その結果,脆性摩擦時では,数100Hzから2MHzに及ぶ広帯域の振動が発生するが,脆性摩擦から摩擦熔融への遷移時には,kHz以上の高周波の発生がなくなり,さらに定常的な摩擦熔融時には.kHz以下の低周波も発生しなくなることがわかった.つまり,断層内部の変形メカニズム・物理プロセスは,断層から放射される地震波の特性に大きな影響を与えることが示された.


第41回 2010年3月3日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
封圧の微小変動がAE活動に及ぼす影響について

講演者:佐藤隆司 (地震素過程研究チーム)

 地球潮汐,ダム水位変動,近くで発生した地震などが地震活動に影響を与える場合があることが知られている.我々は応力の微小変動が地震発生に及ぼす影響を実験的に調べるため,封圧に周期的な変動を与えた花崗岩の三軸圧縮試験を行い発生するAEを計測した.今回は実験結果の速報的な報告を行う.また,講演の前半では地震学におけるAE研究の意義,我々の実験室の特徴等について紹介する.


第40回 2010年2月24日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室
活断層評価の改善に向けて−現状と課題−

講演者:吾妻 崇 (活断層評価研究チーム)

 1995年兵庫県南部地震以降に国の地震調査研究推進本部が実施してきた活断層の長期評価は,新しい評価手法への更新が望まれている.
 改善の方向性として,まず,一つの起震断層から発生する地震の多様性を考慮することが挙げられる.これについては,断層帯をセグメントに区分して,それらの同時活動による大地震の発生を想定することが主要な課題となる.従来の評価ではセグメント区分は主として一つの起震断層において異なる活動履歴が得られた場合に適用されてきたが,今後,この区分を積極的に行なうためには,活動履歴に加えて断層の分布形状に基づく区分が導入されるべきである.活断層基本図に代表される断層詳細分布の検討作業は,その基礎情報となるべきものである.地震発生について一方では,地表に明瞭な痕跡を残さない地震の発生などを考慮する必要がある.トレンチ調査など地表の地形・地質調査では検出できない地震が発生する仕組みやその発生を予測する評価方法ついては今後も検討が必要な課題である.
 次に挙げられる課題は,地表の活断層情報だけではなく,地下の震源断層情報に関する評価を充実させることである.従来の断層評価では地表における活断層の位置とその活動時期に関する情報の評価に終始することが多かったが,今後は少なくとも重要断層帯として挙げられるものについては,地下の震源断層推定に結びつく情報を充実させ,将来発生することが予想される地震の位置と規模だけでなく,そこから発生する強震動の予測にもつなげることができる検討が必要である.
 さらに,断層帯ごとだけではなく,地域的な地震発生評価に結びつけることも重要である.一つ一つの断層帯から発生する地震の発生確率だけでなく,活断層の分布が密な地域とそうでない地域の違いが社会に理解されるような評価が行なわれることが望ましい.また,ある断層帯の活動が,隣接してその地域に分布する断層の活動に与える影響についての評価が行なわれるよう,関連研究の進展が望まれている.


第39回 2010年2月17日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
断層のLong-term strengthに対する水の影響

講演者:増田幸治

 断層摩擦強度に対する水の影響を高温高圧実験で測定することによって,脆性領域での長期的摩擦強度弱化メカニズムを推定した.
 地質学的・地球物理学的観測によると,地殻中の断層強度は実験室で測定される摩擦強度より弱いことが知られている.また,南海トラフ地震発生帯掘削計画においても,解明すべき科学的な仮説のひとつとして「地震発生断層は”弱い”断層である」ということが挙げられている.長期的にみた断層強度の低さは,様々な説で説明されているが完全には解決されていない問題である.
 そこで,長期的にみた断層強度弱化に対する説明として,水の影響について実験的に調べた.
 自然界でゆっくり進行する現象を観察可能な速度で再現するために,実際に知りたい深度よりも高温の状態を実現し,ゆっくりとした現象をスピードアップできる設備を開発し,実際の環境より高温状態で断層の摩擦強度に対する水の影響を検証した.その結果,特に高温環境下では,有効封圧の法則(間隙水圧の上昇で強度低下を説明)として知られているような物理メカニズムとは別のメカニズム(化学的効果)によると考えられる強度低下が観察された.


第38回 2010年2月10日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室
挑戦!断層破砕物質から断層活動度を推定する

講演者:宮下 由香里

 地表に明瞭な変動地形が認められない断層や,比較的新しい時代(1万年前以降)の堆積物が分布しない地域の断層は,その存在や活動性を認定することが難しい.このような断層の活動度を評価する指標として,断層破砕物質(断層ガウジ)の色彩が使えないか検討を行ってきた.
 2000年鳥取県西部地震地域について,詳細な地質調査と断層岩の測色・化学分析を実施した結果,余震域,空中写真判読によってリニアメントが判読される地域,その他の地域では,断層岩の性状(種類や分布密度)と色彩に有意の差が認められた.すなわち,余震域の断層岩は白,淡緑色等の還元色,リニアメント地域の断層岩は黄褐色,その他の地域の断層岩は赤味を帯びた酸化色を呈することで特徴づけられる.鉱物化学分析の結果,白色はイライト,黄色はゲータイト,赤色はヘマタイトに起因する可能性が高い.
以上から導き出される断層岩の鉱物化学変化のメカニズムについては考察中である.セミナーでは,まず上記観察事実について報告したい.


第37回 2010年2月3日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
Earthquakes, Faults, Aseismic Deformation, and Seismic Hazard Analysis

講演者:Steve Wesnousky(University of Nevada, Reno)

A compilation of surface slip distributions and maps of historical earthquake ruptures provides the basis to examine geometrical controls on rupture propagation and the likelihood that coseismic rupture extends below the base of the seismogenic layer. Additionally, observations suggest that aseismic deformation may be leading to systematic biases in the estimation of earthquake size, recurrence, and attendant strong ground motions in seismic hazard analyses founded on the geologic description of the locations, lengths and slip rates of active faults.


第36回 2010年1月22日(金)15:00-16:00 場所:860セミナー室

"Pirates of the Caribbean: Can hurricanes steal a golden geologicalcase for the 1755 Lisbon tsunami?"

講演者: Brian Atwater(USGS)

Between the years 1650 and 1800, an unusual flood from the Atlantic Ocean overran part of an island in the northeast Caribbean. Its waters sliced through beach ridges, spread sand more than a kilometer inland, and moved boulders from inland outcrops. If not caused by an unusual hurricane, the overwash can be linked to the All Saints' Day earthquake that prompted Voltaire's attack on Optimism, the philosophy that "All is for the best."


第35回 2010年1月20日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室

3次元バランス法による断層モデル構築の試み
−2003年宮城県北部地震震源域の例−

講演者: 木村治夫(地震災害予測研究チーム)

 逆断層の上盤には褶曲構造を伴っている例が多く,これらの褶曲構造に地下の形状や変位量を反映した断層関連褶曲の理論を適用すれば,褶曲構造の形態から地下の断層面の形状を推定することが可能である.日本の活断層においても,このような手法を用いて,2次元褶曲構造に基づいた断層モデルの構築が行われているが,より精度の高い断層モデルを構築するためには3次元での褶曲構造から断層面の形状を求める手法を確立することが望まれる.そこで,2003年宮城県北部地震の震源域で3次元地質構造から褶曲構造を構築し,それに断層関連褶曲の理論を適用して断層面の3次元形状を求め,地震後に観測された余震分布と比較することにより,この手法の信頼性について検討した.


第34回 2010年1月13日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
横ずれ谷地形による活断層の活動度評価−LiDAR DEMに基づいた定量解析

講演者: 林 舟(活断層評価研究チーム)

 活動履歴不明の横ずれ断層については,河谷の屈曲など地形情報から活断層の活動度を評価することが期待される.本研究は,航空レーザー測量による詳細デジタル地形データを用いて,横ずれ活断層による河谷屈曲の有無を定量的に判定し,屈曲量の客観的な抽出手法を検討した.この手法を西南日本山地に分布する横ずれ変位速度の異なる(~0.01 mm/yr - ~10 mm/yr)5断層(跡津川断層,根尾谷断層,高山断層,駄口断層と鹿野断層)へ適用し,平均変位速度と屈曲量及び谷の傾斜量などとの関係を検討した.
その結果,活断層の活動度を見積もるには,屈曲率(屈曲量と谷の長さとの比率)と谷の侵食速度が必要であることが示唆された.


第33回 2010年1月6日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室

深部低周波微動の時空間的特徴

講演者: 武田直人(地震地下水研究チーム)

 深部低周波微動の発見以来,さまざまな観測・解析手法が考案・実施され,それらの技術は年々進歩している.今回はこれらの観測結果を元に,深部低周波微動の移動の様子,ゆっくりすべりとの位置関係を中心に,その特徴を簡単にまとめる.


第32回 2009年12月9日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室

地震活動と減衰・速度トモグラフィを基礎とした下部地殻レオロジー構造のモデル化:特に糸魚川ー静岡構造線の周辺について

講演者: 長 郁夫(地震発生機構研究チーム )

 地震活動や減衰・速度トモグラフィデータを用いて,全国の上部地殻(地震発生層以深)から上部マントル(モホ直下)にかけてのマクロな温度構造をモデル化した.次に,得られた温度を岩石の流動則に適用して地殻強度や粘性の3次元的な不均質をモデル化した.このモデル化の目的は,物理モデルに基づいて内陸地震発生のシミュレーションを実施することである.講演ではモデル化方法を説明し,特に糸静線周辺の温度分布と,それを用いて得られた粘性・強度の3次元分布を示す.糸静線沿いに変化するレオロジー構造の特徴と今後実施予定のシミュレーションの展望を述べる.


第31回 2009年12月2日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室

地域の『地震像・津波像』の理解のための取組と地震調査研究に地方が期待すること

講演者: 三重県防災危機管理部地震対策室 奥野真行

今回は,地震地下水チームをホストとして技術研修中の奥野氏をお呼びして,三重県の防災のあり方についてご講演いただくことになりました.

氏は地球科学分野出身,大学卒業後は三重県の防災畑で活躍されてきた30代後半の方です.地域に起こりえるハザードを住民の『腑に落ちる』ような形で提示するために,業務活動のキーワードとして

○地域の「地震像」,「津波像」
○自助・共助取組促進のための「地震像」,「津波像」の「見える化」
○その「見える化」のための「(研究者→地方・住民への)橋わたし」,防災教育
○「地震防災」が「持続可能」であるためには?

を重視していらっしゃるとのことです.上のキーワードに基づいて,前半はご講演いただき,後半はフリーディスカッションを行う予定です.地域防災担当者の生の言葉を聞きかつ議論する良い機会です.多くの分野からのご参加をお待ちしております.


第30回 2009年11月25日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室

伊勢湾付近での短期的スロースリップイベント発生状況の推定

講演者: 北川有一 (地震地下水研究チーム )

 四国〜紀伊半島〜長野県の直下のプレート境界沿いに帯状の領域で,深部低周波微動及び短期的スロースリップイベント(SSE)が繰り返し発生している.一方で,これらの活動は紀伊水道や伊勢湾付近では殆ど発生していないと考えられている.2008年11月,主に三重県中部で深部低周波地震が発生した.三重県の観測点(歪や傾斜)を使用して,三重県中部での短期的SSEの発生が推定された.しかしながら,三重県中部の短期的SSEの滑りモデルでは,愛知県での歪の観測結果を充分には説明できなかった.そこで,深部低周波微動が殆ど発生しなかった伊勢湾付近でも同時に短期的SSEが発生していたと仮定した場合,愛知県の観測結果をより良く説明できることが分かった.2008年11月以外のイベントについても紹介する.


第29回 2009年11月24日(火)15:00-16:00 場所:別棟大会議室

Subsurface structures of the seismogenic fault of the Longmen Shan fold-and-thrust belt: co-seismic faults of the 2008 Mw7.9 Wenchuan earthquake

講演者: Dong Jia1) ○ and Aiming Lin2) (○:登壇者)
1) Department of Earth Sciences, Nanjing University, China
2) Graduate School, Shizuoka University, Japan

The 2008 Mw 7.9 Wenchuan earthquake is a result of ongoing India-Tibet collision and reflects the growth of the Longmen Shan fold-and-thrust belt. Integrating the geological investigations, relocated aftershocks, and seismicreflection profiles, we construct a 3D structural model of the geometry of the co-seismic faults and related structures of the Wenchuan earthquake. In the 3D structural model, the differences between the southern and northern segments are revealed. The structural transition zone between the two segments contains a major geometric segment boundary reflecting differences in the structural configuration of the thrust ramp and the tectonic evolution of the fault system, which appears to have localized the significant damage from Anxian to Beichuan.
Within the northern segment, we identify a transverse structure across which the Beichuan fault plunges under the Tangwangzhai syncline. This boundary corresponds to a marked change in the nature of the surface rupture, and is illuminated by a microearthquake sequence perpendicular to the Longmen Shan thrust belt. In the southern segment, our investigations confirm that uplift due to active faulting and folding is largely responsible for the areas of steepest topography. Based on this association, the southwestern segment of the Longmen Shan, south of the Wenchuan earthquake, is likely active and presents a significant earthquake hazard, despite the lack of historic earthquakes in this region. This study illustrates the importance of building 3D models to study active faulting and folding, as well as earthquake hazard assessment.


第28回 2009年11月18日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
動的破壊シミュレーションによる1668年アナトリア地震の連動可能性の検討

講演者: 加瀬祐子(地震発生機構研究チーム)

 北アナトリア断層系では,1939年の地震ではResadiyeセグメントに,1942年の地震ではNiksarとErbaaのつのセグメントに地表断層が表れた.一方,歴史記録や古地震学的調査結果からは,1668年に,これら3つのセグメントを含むひとつの連動型地震が発生した可能性が指摘されている.しかし,ResadiyeセグメントとNiksarセグメントとの間の不連続は,走向方向に10 km,法線方向に11 kmという大規模なものであり,これらのセグメントの連動は想像しがたい.そこで,1939, 1942年の地震の地表でのすべり分布と現在の応力場のデータを基に,これら3つのセグメントの動的破壊モデルを構築し,1668年の地震の古地震学的データを満足するひとつの連動型地震が起こりうるかどうかを調べた.古地震学的調査によれば,1668年の地震時にNiksarで1942年の地震時の2倍以上のすべりが生じ,その前の地震は6世紀にまで遡る.そこで,Niksar,Erbaaセグメントの応力降下量を,1939, 1942年の地震のすべり量から推測される値の2倍に仮定すると,破壊は不連続を乗り越え,3つのセグメントが連動する.この結果は,前の地震からの時間が異なるために生じる歪蓄積量の変動が,連動の有無を左右し,時には,11 kmもの不連続を越えた連動破壊を生じうることを示している.


第27回 2009年11月11日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室
津波被害記録を用いた被害関数の構築

講演者: 行谷佑一(海溝型地震履歴研究チーム)

 江戸時代といった観測機器が存在しない時代の津波の高さは,どのようにして知ることができるのであろうか?
一般的には歴史史料に記録された津波に関する記述を基に,現地調査を行うことで明らかにすることができる.
 たとえば,三重県鳥羽市相差においては,安政東海地震津波(1854年)の記録として,「梵潮寺の地蔵前まで浪先来り」(『維時明治三拾壱戌年三月写之地震津波後世要鎮記 大年寄蔵書』)という記述が残されており,この梵潮寺の地蔵前の高さを測定することで,ここでの津波の高さを具体的に知ることができる.
 しかしながら,たとえば,岩手県上閉伊郡大槌町においては,寛政五年宮城県沖の地震津波(1793年)の記録として,「一 家数七拾壱軒
右は流家潰家ニ御座候」(『盛岡藩雑書』)
という記述が残されている.
 このような記述の場合,被害が生じたことは明らかであるが,しかしどの程度の津波の高さであったかは具体的には不明である.
そこで,こういった記述から具体的な津波の高さを推定するには,津波の高さと被害の程度を結びつける関係(津波被害関数)を定量的に得ることが一つの解決法となる.
 本セミナーでは,津波被害記録から津波被害関数を構築し,それを用いて歴史津波の高さを推定する試みについて発表を行う.


第26回 2009年11月4日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
新第三紀泥質岩中の断層・亀裂の透水特性と構造

講演者: 上原真一(地震素過程研究チーム)

 新第三紀堆積岩は,近年,例えば高レベル放射性廃棄物の地層処分やCO2地中貯留といった,地下空間の工学的利用サイトとして注目されている.このような地下空間利用用途においては,流体移動に対する遮蔽性が十分であるか,またその性質が長期的保たれるかを評価することが重要である.特に日本の場合,岩盤中に内在する,あるいは新たに生成される断層や亀裂といった構造が,岩盤全体の流動特性にどのような影響を与えるかを評価する必要がある.しかしながら,その評価手法は確立していないのが現状である.
 我々は,本チームの有する実験施設を利用して,新第三紀泥質岩中の断層および亀裂の透水特性を,主に室内試験から評価する手法についての研究を行っている.今回のセミナーでは,房総地域上総層群泥質岩および北海道北部幌延地域珪質泥岩を対象とした研究事例について紹介する予定である.


第25回 2009年10月28日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
第1種分岐断層形成の力学

講演者: 安藤亮輔(地震災害予測研究チーム)

 断層形成・進化のダイナミクスや断層形状が地震破壊過程に与える影響を解明するために,地図上の断層位置に関する大量の情報から,断層形状を定量的・統計的に解析する手法の開発を行っている.その一例として,カリフォルニアの横ずれ断層系について,それらの分岐断層の主断層からの角度を定量化し,+/-17度程度にはっきりとしたピークを持つ分布に従うことを明らかにした(Ando, Shaw & Scholz, 2009, BSSA).今回,その分布の成因を明らかにするために,対象をアルパイン断層,デナリ断層に拡大して,それらについて主断層ならびに数10km以上の大規模な分岐断層(第1種分岐断層と呼ぶ)とプレートの相対運動方向を比較した.その結果,それら分岐断層は,どれも主断層よりプレートの運動方向に近い方向を向いていることが分かった.さらに,Mohr-Coulombの破壊基準に基づく単純なモデルにより,この17度がよく説明できることが分かった(Scholz, Ando & Shaw, in press, JSG).


第24回 2009年10月7日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室
活断層の地表変形の多様性についての考察

講演者: 桑原保人(地震発生機構研究チーム)

 標題の多様性の要因として,地下深部の地震発生層でのすべり量のわずかな違いが,地表変形の大きな違いとして現れる可能性を考えることにする.
 ここでは,この立場から2つの要因について検討を始めたのでこれについて紹介する.1つめは,深部の応力場の違いが地表変形の違いにどのように現れるか,加瀬さんの破壊伝播のプログラムを用いて検討した.2つめは,地表付近の地盤のもつ非線形な構成則が原因となる可能性について,検討の現状と今後の予定を紹介する.


第23回 2009年9月30日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
火山噴火に伴う津波堆積物の特徴:南九州で発生した鬼界アカホヤ噴火の例

講演者:藤原 治(海溝型地震履歴研究チーム)

 火山噴火が海洋や湖で発生すると,山体崩壊などによって津波を起こすことがあり,歴史上も巨大津波と災害を引き起こした例がある.しかし,火山噴火に伴う津波堆積物については未だ研究例が少なく,その特徴や台風や土石流などによる堆積物との違いについても良く分かっていない.南九州沖で7300年前に発生した鬼界アカホヤ噴火に伴う津波堆積物を観察する機会があったので,そこから得られた情報を紹介する.

以下,投稿中の論文要旨.

大分市の横尾貝塚で見られる厚い鬼界アカホヤ火山灰層(K-Ah:層厚約65cm)について,堆積構造の解析などに基づいて形成プロセスを復元した.この火山灰層をもたらした噴火は,横尾貝塚から約300 km南にある鬼界カルデラで約7300 cal BPに起こったもので,完新世における地球上で最大規模の噴火イベントの一つである.横尾貝塚のK-Ahは湾奥にあった小規模な谷に堆積したもので,様々な堆積構造が発達し異常堆積を示す下部(ユニットI〜V;層厚約35cm)と,均質な上部(ユニットVI;層厚約30 cm)に分けられる.下部はK-Ahの降灰中に湾岸の谷に突入した流水によって堆積したものである.ユニットI〜Vの重なり方は,この異常堆積層が谷を遡上する流れと下る流れが長周期で繰り返すことで形成されたことを示す.上部のユニットVIは降下火山灰と考えられる.K-Ah降下との同時性や,長周期で遡上と流下を繰り返す特徴は,異常堆積を示すK-Ah下部がアカホヤ噴火に伴う津波堆積物であることを強く示唆する.


第22回 2009年9月28日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室

結合レイリー振動子系の数値的解析と地震活動シミュレーターとしての応用

講演者:阿部雄太(地震発生機構研究チーム)

 プレートテクトニクスと固着すべりの概念に基づいた地震活動のシミュレーター,所謂バネブロックモデルはこれまで数多く提出されてきたが,それらのほとんどは静止摩擦と動摩擦を区別した不連続な運動方程式を解くものであった.不連続な運動方程式を持つ系は力学系的な解析を行うのが困難であるし,また数値計算する際に誤差を生じる恐れがある.そこで本研究では静止摩擦と動摩擦の概念の区別をしない摩擦モデル(Rayleigh,1898)を導入した結合レイリー振動子モデルを使って地震活動のシミュレーションを行う.
 まず結合レイリー振動子モデルの4つのモデルパラメーター(起動速度,系の非線形性の強さを決める非線形パラメーター,隣接する振動子間の弾性係数・粘性係数)が系の挙動をどのように支配するのか,系統的な数値計算によって調べた.その結果から,モデルが現実の地震活動に見られるような臨界的挙動を示すパラメーターの値の範囲を示し,その起源を考察した.また本研究では,現実の地震活動とモデルの時系列データの比較による,力学モデルの新たな評価方法を提案する.臨界的挙動を示す系ではスケーリング則が成り立ち,特徴的なスケールがなくなることから,モデルの時間とマグニチュードのスケールを現実のスケールに変換し,実際の地震活動と時系列的な比較を行った.現実の地震活動のデータとしては,勝俣・笠原(2004)による時間的に均質な地震カタログ(1994.1.1~2006.12.31)から,Katsumata et al.(2003)の太平洋プレートの3次元境界面モデルを適用して,プレート境界面で発生した地震を取り出した.その結果,モデルの中から現実の時系列とほとんど等しい時系列が多く見つかり,比較を行った期間外に関しても現実とモデルの相関が高い例があった.このことは,時系列の比較によって力学モデルによる新たな地震活動の時間予測可能性を示唆している.


第21回 2009年9月16日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
高温・低速度領域における蛇紋岩の変形挙動

講演者:高橋美紀(地震素過程研究チーム)

 内陸大地震の震源深さは岩石の変形挙動が脆性的・摩擦的な挙動をする領域から塑性的・流動的な挙動へと遷移する温度条件に相当するとされ,この領域における変形の構成則は摩擦則と流動則の混合したものになっていると推測される.
 脆性―塑性遷移領域における摩擦挙動を把握することは内陸大地震の発生メカニズムを明らかにすることにつながる.今回我々は室内実験の条件でも比較的流動的な挙動が現れやすい蛇紋岩を用いて摩擦―流動の遷移領域における挙動を実験室で観察する試みを行った.また蛇紋岩は沈み込み帯に存在する岩石としても知られており,海溝型地震の発生メカニズムの解明にも有用な情報が得られると期待できる.ここでは摩擦係数の速度依存性(速度変化に対する摩擦係数の変化)について現段階までの実験結果について報告する. 封圧100MPa,間隙水圧30MPaの条件で,摩擦構成則に従う挙動が観察されたのは常温・高速領域の結果のみであり,他の条件において蛇紋岩ガウジは全て流動的な挙動を示した.全ての変形速度条件において,より高温ほど速度依存性はより大きな正の値を示す傾向が300℃まで見られ,450℃以上の高温下では摩擦挙動の復活と挙動の不安定化が観された.450℃以上の高温における摩擦挙動の復活と挙動の不安定化は蛇紋岩の脱水が関係している可能性がある.実験後の試料のXRD解析より,わずかではあるがオリビン(Forsterite)の生成が確認された.300℃〜450℃の間における速度依存性は複雑で,低速では大きな正の値をとるのに対し,高速になるに従って低下していた.本セミナーでは速度依存性と温度・速度条件の間の関係から蛇紋岩の流動メカニズムについて議論する予定である.


第20回 2009年9月9日()15:30-16:30 場所:別棟大会議室
スマトラ島北部沖,Simeulue島で見つかった2層の古津波堆積物とその年代

講演者:藤野滋弘(海溝型地震履歴研究チーム)

 インドネシア,スマトラ島冲のスンダ海溝における津波履歴を調べるため,ピット掘削による津波堆積物調査を行った.調査地であるSimeulue島はスマトラ島北部沖,2004年12月と2005年3月に発生した地震(Mw 9.2,Mw 8.7)の破壊域にまたがって位置する.沿岸低地でピット掘削を行った結果,島南部のBusongおよびNaibosにおいて古津波堆積物を見つけた.Busongはサンゴ礁上に発達した浜堤平野であり,堤間湿地の泥質堆積物中に二層の砂層が認められた.二層ともサンゴ巨礫を多く伴っており,現世津波堆積物によく見られる級化ユニット構造が観察された.Naibosでは泥質堆積物中に海棲生物の破片を含み,サンゴ巨礫を伴う砂層が一層見つかり,級化ユニット構造が観察された.
 津波堆積物から見つかったサンゴ塊を用いてU/Th年代測定を行った.その結果Busongで見られた二層の古津波堆積物の内,上位の層から得られたサンゴ塊から1861年にSimeulue島周辺で起きた地震(M〜8.5)に重なるAD1870±24の値を得た.また,下位の層のサンゴ塊からは18世紀末,周辺のマイクロアトール(サンゴ)の離水年代と重なる年代値が得られた.Naibosの古津波堆積物から得られたサンゴ塊も1861年の地震に重なる年代値を示した.
 離水サンゴの調査から18世紀末と1861年の地震ではSimeulue島南部とその南にあるNias島の北部で隆起が起きたことが明らかにされつつある.今回の見つかった
古津波堆積物はそれらの隆起を起こした地震に伴う津波の痕跡と考えられる.


第19回 2009年9月2日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
地震計データのみによる絶対応力場推定の試み

講演者:今西和俊(地震発生機構研究チーム)

 様々な観測機器の開発や解析方法が発展してきた現在においても,地震発生の原動力である応力(とくにその絶対値)については未だに不明な部分が多い.絶対応力の最も直接的な測定方法は,掘削孔を利用した原位置応力測定である.しかし,技術的な制約により測定できる範囲は深さ数kmまでで,地震発生層の極浅部に限られる問題点があった.さらに,掘削に時間を要することや費用の面から測定は数点に限られるため,面的な分布を得られないという本質的な欠点もあった.
 この1年ほど,地震学で使われる観測機器の中で最も普及している地震計のデータだけから絶対応力場の情報を引き出す研究に取り組んでいる.本発表では,新潟県中越沖地震と兵庫県南部地震の震源域,そして,跡津川断層帯に適用した例について紹介する.


第18回 2009年8月26日()15:00-16:00 場所:別棟大会議室
富士川河口断層帯北部周辺の複雑な地質構造

講演者:丸山 正(活断層評価研究チーム)

本州弧−伊豆弧の衝突境界周辺の活構造の特性を理解することを目的として,同地域を代表する断層である富士川河口断層帯の地質調査を実施している.同断層帯は,長さ10数kmの断層群が雁行・並走しながら分布して断層帯を形成している.断層間の相互関係を評価する上で,各断層の変形像・運動史の解明が重要である.しかしながら,こうした問題を解明する上で基礎となる各断層周辺の層序や地質構造が十分解明されているとは言いがたい.特に,安居山断層・芝川断層からなる同断層帯北部区間周辺の層序や地質構造に関しては,これまでいくつかの機関により調査が実施されているものの見解の相違が見られる.そこで,両断層に挟まれた範囲に分布する羽鮒丘陵とその周辺の地質調査を実施した.その結果,1)丘陵内に分布する中部更新統中に顕著な傾斜不整合を示す露頭が確認された,2)丘陵内に推定される胴切り断層を境にその南北両側で中部更新統の地質構造が大きく異なっている,3)芝川断層上盤側に分布する鮮新統中に礫岩の塑性変形で特徴づけられる剪断帯が発達する,などが発見された.これらについて報告する.


第17回 2009年8月24日(月)15:00-16:00 場所:別棟大会議室

2004年インド洋津波堆積物−スリランカ・タイの例−

講演者:松本 弾(沿岸堆積RG)

 近年,数多くの研究で地質記録から津波堆積物が見出されているが,その認定基準は十分に確立されてはいない.このような問題を解決するためには現世の津波堆積物を対象とした調査から津波堆積物の特徴を明らかにする必要がある.この発表では,その一例としてスリランカとタイで調査した2004年インド洋津波堆積物の調査結果を発表する.スリランカの調査では,インド洋に面したラグーンに形成された津波堆積物を27地点でコア採取し,層厚・粒度分布を調べた.その結果,津波堆積物は限定的な分布様式を示し,内陸に向かって薄層化・細粒化する傾向を示すことが明らかとなった.
 タイの例では,アンダマン海に面する海岸低地から2枚の級化ユニットをもつ津波堆積物を対象とした.調査の結果,この津波堆積物が2回の遡上流イベントに対応して形成されたことがわかった.2枚の級化ユニット境界には,truncated flame structureと名付けた火炎状構造様の変形構造を見出した.断面観察からこの変形構造が上位の級化ユニットの堆積と同時に形成されたことを明らかにし,さらにこの構造の陸上津波堆積物の指標としての有効性を示した.
 最後にこれらの実例の層厚分布と地形データを用いて1次元定常流モデルを使った津波堆積物を形成させる簡単なシミュレーション結果も合わせて報告する.


第16回 2009年8月19日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
トレンチ調査による断層活動イベント認定の諸問題

講演者:吉岡敏和(活断層・地震研究センター)

 活断層の過去の活動を明らかにするためには,地形・地質学的な調査手法に頼らざるを得ないが,その中でもトレンチ調査は最も効果的で広く用いられている方法である.しかしながら,このトレンチ調査も万能ではない.すなわち,地層の堆積が連続的でない場合や大きく浸食された場合は,その間の活動の記録は全く失われていることになる.また,地表に複数の断層トレースがあった場合も,それぞれの地点の代表性の問題が生じうる.今回のセミナーでは,これまでに担当したトレンチ調査をもとに,断層活動イベントの認定の問題や欠落(見落とし)の可能性を取り上げ,限られたデータから断層活動履歴をどのように評価すべきかについて問題提起する.


第15回 2009年8月5日(水)15:30-16:30 場所:別棟大会議室
地震後に観測された水理定数変化と多孔質弾性体理論で説明できない地下水位変化

講演者:松本則夫(活断層・地震研究センター)

 地震地下水チームでは東海地震予知のために地下水位観測を1970年代から続けている.プレスリップが起こった場合に期待される地下水位変化は非常に小さいので,地下水位の地球潮汐や気圧,降雨に対する応答を適切に評価する方法を開発してきた.開発した方法を用いることによって,地震後の水位変化を適切に評価できるようになった.一方で,地球潮汐などに対する地下水位の応答を用いて水理定数の時間変化を求めることができる.講演では地震後に観測された水理定数の時間変化と地震後に観測した多孔質弾性体理論で説明できない地下水位変化について報告する.


第14回 2009年7月31日(金)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
プレート沈み込み伴う地震発生と地殻変形

講演者:橋本千尋(名古屋大学・環境学研究科)

 プレート相対運動に起因する変動現象の物理モデリングとそれに基づく大規模数値シミュレーションにより,大地震発生や長期的地殻変動等の多様な地殻活動現象をプレート間の力学的相互作用の帰結として統一的に理解することが可能になりつつある.本セミナーでは,プレート沈み込み帯に於けるプレート間相互作用の基本的な考え方を示し,物理モデルに基づく数値シミュレーションと測地データ解析を通した日本列島域の地殻活動に関する研究の成果を紹介する.


第13回 2009年7月29日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
松本市北部における浅層反射法地震波探査

講演者:堀川晴央(活断層・地震研究センター)

 糸魚川−静岡構造線活断層系を構成する松本盆地東縁断層は位置,形状,卓越するすべりのセンスといった断層の基本的な性質に関して様々な議論がある.我々は,地形調査で推定された断層位置を横切り,ほぼ東西方向に伸びる測線を展開して浅層反射法地震波探査を実施した.その結果,測線の東西で対照的な速度構造が見出され,その速度構造境界はほぼ鉛直に伸びることが明らかとなった.
 この速度境界は第四紀に活動している断層と考えられる.すなわち,本研究は松本盆地東縁断層が少なくとも浅部において鉛直に近いことを示唆する.


第12回 2009年7月22日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
糸魚川−静岡構造線断層帯:地下形状・変位様式等をめぐる
論点の整理

講演者:多田 卓(活断層・地震研究センター)

 糸魚川−静岡構造線断層帯は,平均変位速度が大きいにもかかわらず,西暦9世紀を最後に,大地震を起こした記録がない.断層帯が長大であるだけに,もしもその全部あるいは相当部分を破壊する地震が今後起きた場合には,人間生活への重大な影響が懸念される.
 この断層帯は,地表トレースのS字状湾曲に端的に現れているように,走向に沿ってかなりの不均質性がある.断層帯の全部を破壊する大地震が起きた場合,一部セグメントだけを破壊する大地震の場合...等のうち,最も起こりそうなケースを想定して変位分布や強震動を予測し,防災対策を講じることが要請されている.
 このためには,断層帯のセグメント区分やセグメント間連動の可能性,地下形状,変位様式...等の基礎的データについて,正確な情報を得ることが必要である.
 現時点では残念ながら,糸静断層帯について,こうした基礎的データがまだ十分に整備されていない.区間によっては,断層が低角傾斜なのか,鉛直に近い高角なのか,また逆断層なのか横ずれ断層なのか,といった基本的な情報に関してさえ,複数説の並立しているケースがある.
 私は糸静断層帯の地下形状・変位様式をめぐって,現時点で何がわかっていて何がわかっていないか,どのような説が出されているかを理解したいと願い,聞き取りや文献講読による駆け足の学習を行った.今回の発表は,そのささやかな成果報告である.


第11回 2009年7月15日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室

地下水等総合観測施設(安濃観測井)

講演者:高橋 誠(活断層・地震研究センター)

 東南海・南海地震予測のため,20ヶ所で観測施設の新設を計画している.既に12ヶ所の設置工事が完了して観測を開始しており,新たな知見も得られ始めている.今年度も2ヶ所で設置工事が行われており,今後も予算に応じて設置を進めていく予定である.
 今回は,安濃観測井を取り上げ,設置工事の具体例を紹介する.工事の際には各種調査を行っており,その結果も含めて報告する.取得した各種のデータは,興味のある人に有効活用していただくことを願っている.


第10 2009年7月9日(木)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
Seismics of porous media

講演者:Fabian Wenzlau(活断層・地震研究センター)

Porous rocks encountered in hydrocarbon reservoirs are often saturated with a mixture of two or more fluids. The calculation of synthetic seismograms as well as the interpretation of in-situ attenuation measurements require a theoretical understanding of the relation between the heterogeneous distribution of fluid patches and the acoustic properties of rocks. I will present theoretical attempts to describe heterogeneous porous rocks, developed within the Rock Physics Group in Karlsruhe, Germany (http://www-gpi.physik.uni-karlsruhe.de/pub/workgroup8/en/), explain the numerical algorithms for wave propagation in porous media and show recent acoustic laboratory measurements of partially saturated rocks.


第9回 2009年7月8日(水)15:00-16:00 場所:国際セミナー室(7-8 326室)

紀伊半島南部における短期的スロースリップイベント

講演者:板場智史(活断層・地震研究センター)

 中部〜四国地方のプレート境界付近(深さ30-40km前後)において,活発な深部低周波微動が間欠的に,帯状に発生しており,四国西部・東部,三重県中部以北についてはHi-net傾斜計等によって,微動に同期して短期的スロースリップイベント(SSE)が発生している事が明らかになっている.一方で四国中部・紀伊半島南部では,活発な微動活動が観測されるものの,短期的SSEの存在は確認されていなかった.他方2007年以降,産総研の地下水等総合観測施設整備プロジェクトにおいて,紀伊半島では5つの観測井で新たに歪等の地殻変動観測を開始し,紀伊半島南部における短期的SSEの検出に成功した.2007年7月〜2009年6月までに11度のイベントを検出している.
 紀伊半島における短期的SSEの発生地域は,和歌山県中部,奈良県南部,三重県中部の3領域に大別でき,その発生様式は領域内のみで数日程度の活動が発生する場合(単発型),複数の領域にまたがって時間をかけて連続的に移動する場合(連動型)や,遠地大地震等の地震波によって励起される場合(励起型)があり,2007年7月以降でも様々なパターンが確認されている.これらの代表的な事例,微動に先行して短期的SSEが始まっていると思われる事例の他,現状の課題,観測手法について紹介する.


第8回 2009年7月1日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
ボーリングコア解析から見た中央構造線の断層帯内部構造

講演者:重松紀生(活断層・地震研究センター)

 断層の性質は物理条件の違いにより変わる.断層深部での内陸地震の発生,断層深部から地表への地震の伝播はこうした多用な断層の挙動に支配される.日本の陸上で最大の断層である中央構造線(以下MTL)は,長い履歴を持ち,異なる条件で形成した断層岩が露出する.従って,その内部構造解析は物理条件の違いによる多様な断層の挙動の理解につながる.
 産業技術総合研究所は東南海・南海地震予測研究の一環として,平成20年に三重県松坂市飯高町赤桶において地下水等の観測井(飯高赤桶観測井)を整備し,この過程でMTLを貫通するコア試料(掘削長600m)が得られた.
 飯高赤桶観測井はMTLの北約300 mに位置し,コアが得られた井戸では掘削深度473.9 mでMTLを貫通している.本発表は,物理条件の違いによる断層の挙動の違いを理解するための第一段階として,ボーリングコアの深度280-500mの断層岩を記載し,各種断層岩の形成条件の復元を試みた結果に関するものである.ボーリングコアに見られる断層岩は300℃以上の条件における不均質な塑性変形(マイロナイト形成)を経験した後,200-250℃における地震性断層運動(シュードタキライト形成),温度150-200℃における脆性断層(カタクレーサイト),温度150℃未満における脆性断層(断層ガウジ),と異なる条件で変形が重複していることが明らかになった.


第7回 2009年6月24日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
台湾における地震地下水観測

講演者:小泉尚嗣(活断層・地震研究センター)

 1999年集集地震以降,台湾では多様な地震調査研究が行なわれる こととなった.2001年にスタートしたPEAR (Program on Earthquake and Active fault Research)がそれである.PEARの一環として,地震前後の地下水変化についての研究(以降,地震地下水研究)も,国立成功大学(防災研究センター)をホストとして,台湾経済省水資源局(WRA)の支援の基に行なわれることになった.我々は,地震地下水研究の計画段階から関与し,2002年からは,共同研究契約を結んだ上で,毎年,産総研と成功大学で交互にワークショップを開き研究交流を行なっている.
 WRAは,地下水管理を目的として,台湾西部の都市域を中心に,約230の観測点に約550の観測井戸を所有・管理していた.1つの観測点に複数の深さの異なる井戸があるのが原則なので,観測点数を井戸数が上回る形になっている.産業用の地下水管理が主目的なので,井戸の深さは数m〜300m程度,地質は主に第三〜四紀の堆積層である.成功大学は,2001-2005年に16の観測井戸を整備したが,その中の多くは,上記のWRAの観測井戸から選んだものである.
 この16の井戸の中で,観測期間の長い6つの井戸を選んで,地震時の地下水変化について評価したので,その結果について,上記の経緯とともに報告する.


第6回 2009年6月18日(木)13:30-14:30 場所:別棟大会議室
地震規模に依存する発生間隔変化のメカニズム

講演者:堀 高峰(Jamstec/IFREE)

南海地震をはじめとして,規模の大きな地震の後に次の地震までの間隔が長くなるtime-predictable的な振る舞いをする地震発生域が知られており,長期評価にも使われている.本セミナーでは,応力降下量が地震毎に変化せず,応力増加率が変化することでtime-predictable的な振る舞いをする新たなエンドメンバーモデルを提案する.


第5回 2009年6月17日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
掘削直後の孔径変化を利用した浅部応力方位測定法の開発とその適用

講演者:木口 努(活断層・地震研究センター)

新しい原理に基づく,比較的簡便に地殻浅部の応力方位を測定する手法と測定装置の開発を行なっており,ほぼ実用化の目処が立った段階である.
測定法の原理は岩石の粘性効果を利用するものであり,掘削直後の孔井のクリープ変形を直接計測することにより,最大水平圧縮応力の方位を求める.
この測定法を用いて,福岡県の警固断層や中国四川省の安寧河―則木河(Anninghe-Zemuhe)断層系などの活断層周辺の応力場の推定を行なってきた.
一方,浅部で応力測定するときには周辺の地形効果がノイズとなるため,周辺地形による地形効果を定量的に評価することも必要である.
発表では,測定法と測定装置の紹介,活断層周辺に適用した結果,地形効果を評価する方法,今後の測定計画などについて説明する.


第4回 2009年6月10日(水)15:00-16:00 場所:7-8-326号室
新規地下水等総合観測網による仮想的な短期的スロースリップ検出能力の評価

講演者:大谷 竜 Ryu Otani (活断層・地震研究センター)

新規地下水等総合観測網による研究対象の一つとして,四国・紀伊半島〜愛知県にかけて発生している短期的スロースリップ現象(Slow Slip Event: SSE)を検出することがある.本講演では,SSEによる地殻変動が弾性体の食い違い理論に従うことを仮定した場合,新規の12点の新規観測点を使ってどの程度の大きさのSSEを検出できる能力があるのかを計算した.その結果,SSEが1日程度の時定数,10km×12kmの空間的な広がりを有し,観測点での線歪のノイズレベルが,これまで産総研観測点で得られた多成分ボアホール歪計のノイズレベルの中でも比較的低い値(2×10-8)である条件を満たせば,本観測網内の広範な領域で,モーメントマグニチュード6.5程度までのプレスリップを検出できることが分かった.但し,SSEの時空間スケールが大きくなると検出能力は低下することも明らかになった.


第3回 2009年6月3日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
地質構造が持つ地下の断層情報

講演者:岡村行信 Yukinobu Okamura (活断層・地震研究センター)

断層関連褶曲は地下の断層と褶曲との関係を非常に単純化した考えであるが,内陸地震の場合,実際の震源断層と地質構造との関係をうまく説明するように見える.また,地表変形を考える上でも有益である.一方で,単純には適用できない例も少なくない.適切に用いるための原理を解説し,適用例と問題点を紹介する.
また,海溝型地震には断層関連褶曲の考えは全く適用できない点についても考察する.


第2回 2009年5月27日(水)15:00-16:00 場所:別棟大会議室
隆起生物遺骸群集が示す南海トラフ沿いの連動型地震履歴

History of multi-segment earthquake along the Nankai Trough, deduced from uplifted sessile assemblage

講演者:宍倉正展 Masanobu Shishikura (活断層・地震研究センター)

南海トラフ沿いで起こるプレート間地震は,歴史記録からおおよそ100〜150年間隔でくり返し発生していることが知られている.このうち1707年宝永地震は東海,東南海,南海のセグメントが同時に破壊した連動型地震とされ,津波の規模も通常より大きかったと考えられている.しかし宝永地震より前の連動型地震の履歴はこれまで知られていなかった.紀伊半島南部沿岸において隆起生物遺骸群集の調査を行い,その高度,構造,年代を検討した結果,連動型地震は400〜600年間隔で生じていたことが明らかになった.本セミナーではこれらの調査結果について説明し,さらに潮岬周辺で見られる津波石の可能性のある漂礫や足摺岬での隆起生物遺骸群集の調査結果も併せて紹介する.


第1回 2009年5月13日(水)15:00-16:00 場所:7-8-326号室
世界最大級の変位量を持つ1931年Fuyun地震断層の断層形状と変位量分布

Fault geometry and slip distribution of a gigantic surface rupture, the 1931 Fuyun rupture, northwestern China

講演者:粟田泰夫 Yasuo Awata (活断層・地震研究センター)

中国・新彊ウイグル自治区北部のアルタイ山脈西麓に出現した1931年Fuyun地震断層の詳細な地表形状と変位量分布を明らかにするために,中国科学院地質・地球物理研究所との共同研究によって長さ160kmの地震断層の全域を再踏査した.この結果,地震断層の最大変位量は約10mであること,断層線は長さ数km規模のギャップやジョグによって,15-47kmの5つのセグメントに区分できることが解明された.また,断層線上に発達する様々な規模の伸張性ジョグの平面形状の相似性と地震時の沈降量から,セグメント境界のジョグは地震発生層の深部にまで達することが示唆される.

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